システム構築に不可欠な要件定義のポイントを徹底解説

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システム構築の要件定義は、プロジェクトの土台を築く重要なステップです。しかし、要件定義が不十分の場合、開発の遅延やコストの増大といった問題に直面する可能性があります。
この記事ではシステム構築における要件定義の基本概念からその重要性、そして失敗しないためのプロセスや体制について徹底解説します。プロジェクトの目的を明確にし、全体像を把握することで、依頼者や開発者などの関係者の認識を一致させ、円滑なシステム構築を実現する方法を解説します。

目次

  1. システム構築に不可欠な要件定義とは何か?
  2. 要件定義のプロセス
  3. 失敗例から学ぶ要件定義の教訓
  4. まとめ:システム構築の成否を分ける会社の選び方

システム構築に不可欠な要件定義とは何か?

依頼者と開発者の間で「こんなはずではなかった」という認識の齟齬が生じるのを防ぎ、プロジェクトを成功に導く羅針盤となるのが「要件定義」です。 そこで、まず「要件定義の基本的な概念」とは何か、混同されがちな「要求定義」との違いにも触れながら説明します。続いて、「要件定義の重要性」として、なぜプロジェクトの品質・コスト・納期を左右するほど決定的な役割を担うのかを、具体的に解説していきます。

要件定義の基本概念

システム構築プロジェクトの成否は、その土台となる「要件定義」の精度に大きく左右されます。要件定義とは、これから構築するシステムが「何を」「どこまで」実現すべきかを、「何が必要か」具体的かつ明確に定義する工程です。これは、システム構築に携わる開発者がシステムの仕様を正確に理解し、依頼者との間に認識の齟齬が生じるのを防ぐための、定義書を作成する作業と言えます。

「要件定義」に似たような言葉で「要求定義」というものがあり、しばしば混同されがちです。
「要求定義」とは、システム構築で依頼者より「何を実現したいか」などの要望や課題を収集・整理して明確にする工程です。煩雑な手作業をなくして業務を効率化したい、などが要求定義にあたります。ここではまだ、システムで何を作るかが決まっていない、漠然とした願いや目的の状態です。

一方で「要件定義」は、要求定義であがった内容に対して、開発者が専門的な視点から実現方法を具体化し、実現すべき仕様へと落とし込みをします。
プロジェクトに関わるすべての依頼者や開発者などの関係者の間で認識の齟齬が生じないよう、同じ解釈ができる客観的かつ具体的な要件へと落とし込みをして要件定義を作成します。

システム構築における要件定義の重要性

要件定義は、設計・開発・テストといった工程、スケジュール・予算・担当者などについても記載して書面で可視化することで、システム構築が進んでから依頼者と開発者の双方が「こんなはずではなかった」という事態を防ぐことにつながります。
後工程になればなるほど修正のコストと工数は増大し、プロジェクト全体に深刻なダメージを与え、当初のスケジュールからも遅れ、納期を守ることが困難になります。
プロジェクト初期の段階で十分な時間をかけて要件定義を行うことは、遠回りに見えて、実は成功への最も確実な近道になります。
そして、この要件定義書は、専門知識が異なる関係者全員をつなぐ共通言語であり、契約書のような役割を果たします。関係者全員が同じゴールに向かっていくために必要となり、完成後のテストや受け入れもこの文書を基準に行われます。
このように、要件定義とはプロジェクトの品質を定め、リスクを制御し、チームを結束させるために重要な工程です。

要件定義のプロセス

要件定義のプロセスとして、「認識合わせと要件を満たすための体制」「要件を満たすための設備」「運用に向けての最終確認とテスト」の3点に分けて説明いたします。

認識合わせと要件を満たすための体制

システム構築の目的と全体像

システム構築の成功は、初期段階の要件定義で関係者間で認識を合わせられるかにかかっています。そのために不可欠なのが、「システム構築の目的と全体像を把握する」という最初の工程です。
まず、『なぜこのシステム構築を行うのか』という「目的」について詳細な部分まで対話し、関係者間での認識を合わせます。これにより、関係者全員が同じゴールを見据えることができ、システム構築進行中における判断の指針とすることができます。
次に、その目的を土台として、『何を、どこまでやるのか』という「全体像(スコープ)」について認識を合わせることで、後の手戻りや要件の抜け漏れといったリスクを未然に防ぎます。
このように、システム構築の始まりにおいて「目的」と「全体像(スコープ)」という二つの軸で、関係者全員の認識を合わせることこそ、システム構築を成功へと導く最初の一歩となります。

システム構築のプロジェクトの参加メンバー

要件定義の段階で適切なメンバーを揃えることは、システム構築プロジェクトを成功させるための大きな要素になります。
まず、プロジェクトマネージャーは全体の進行管理やスケジュール調整や予算管理を行い、各メンバーがスムーズに連携できるようにする役割を担います。メンバーはシステム構築する内容によりますが、ITアーキテクトは技術的なリーダー、システムエンジニアはシステム設計図の作成、デザイナーは画面デザイン(UI)や、快適な利用体験(UX)の設計、インフラエンジニアはサーバやネットワーク、データベースなどの設計や構築・保守、品質保証エンジニア(テスター)はテストをしバグや設計書との相違がないか検証します。このように多くのメンバーが必要になります。
また、依頼者もシステム構築に積極的に関与し、必要なフィードバックを提供することが重要です。こうしたチーム構成により、システム構築の目的達成に向けた強固な基盤ができます。

システムの全体構成

システムがどのようなコンポーネントで成り立っているのか、各コンポーネントがどのように連携しているのかを示すものです。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、データベース、インターフェースなど、システムを構成するすべての要素が含まれます。
システムの全体構成を視覚化するために、図を用いて作成することが一般的です。この図は、各コンポーネントの配置や通信経路を示すだけでなく、システムが依存する外部システムやネットワーク構成も示します。このような視覚化があることで、関係者全員がシステムの動作や情報の流れを共通理解として持つことができ、プロジェクトの進行における認識の齟齬を防ぐことができます。適切な全体構成を策定することで、要件定義の精度が向上し、後の開発フェーズでのトラブルを未然に防ぐことができます。

要件を満たすための設備

システムが備えるべき機能一覧

依頼者が求める基本的な機能をリスト化します。実際に利用するユーザが日常的に使用する機能、例えばデータ入力や出力、検索機能、レポート生成機能など、基本的な操作を支える機能などを確認します。業務の効率化を図るための自動通知や定期的なバックアップなどの確認もします。
セキュリティ機能の確認も必要になります。ユーザ認証やアクセス制御、データ暗号化は、機密情報の保護に欠かせない機能です。これらの要件も要件定義へ明記する必要があります。
将来的な機能追加やユーザ増加に対応できるような設計を採用することが望ましいです。ユーザのフィードバックを迅速に反映できる柔軟性も、システム構築の長期的な成功につながります。画面デザイン(UI)や、快適な利用体験(UX)の親しみやすさと直感的な操作性を確保し、ユーザ体験を向上させることでシステムの利用率を高めることができます。

システムに求められる性能や品質

システムの性能や品質が不十分だと、依頼者の期待に応えられないだけでなく、ビジネスへの影響も大きくなります。性能においては、システムが必要とされる処理速度や応答時間、同時接続数などが考慮されます。例えば、オンラインショッピングサイトであれば、ピーク時のトラフィックを処理できる能力が求められます。一方、品質に関しては、システムの安定性や信頼性、保守性が含まれます。ユーザにとって直感的に操作でき、トラブルが発生した場合にも迅速に対処できることは欠かせません。セキュリティも重要視され、データ漏えいや不正アクセスを防ぐ対策が求められます。これらの要件も要件定義へ明記する必要があります。

デザインや操作性

画面デザイン(UI)や、操作性の快適さ(UX)も重要な要素です。見づらい・使いづらい場合、ユーザがシステムを直感的に操作できず、満足度が低下する可能性があります。操作性については、ユーザが求める機能を簡単に見つけられるようなナビゲーションの設計や、直感的に理解できるデザインが求められます。特に、ユーザの多様な使用環境に対応できるよう、アクセシビリティへの配慮も重要です。
一方、デザインは直感的な操作性や視覚的な見やすさだけでなく、情報の整理や優先度の明確化を助ける役割を担っています。見やすいデザインはユーザの興味を引きつけ、使用意欲を高めますが、過度に凝ったデザインは操作性を損なう可能性があるため、バランスが重要になります。
デザインや操作性はプロトタイプやユーザテストを通じて、実際のユーザのフィードバックを反映しながら改善していくことが効果的です。ユーザが本当に使いやすいと感じるシステムを構築することができ、顧客満足度の向上につながります。要件定義の段階でこれらの要素をしっかりと定義し、開発プロセス全体を通じて反映させることが、成功するシステム構築の鍵となります。

運用に向けての最終確認とテスト

システムの運用、データ、移行に関する取り決め

システム運用の取り決めでは、システムが稼働する環境や運用体制を具体的に定義し、日常的な運用管理やトラブル時の解消手順を明確にします。システムの安定性と信頼性を確保し、運用時の混乱を未然に防ぐことができます。
データに関しては、データの収集、保存、管理、バックアップ、そしてセキュリティ対策までを決めます。データは企業にとって非常に重要な資産であり、その整合性や保護が確保されなければ、事業の存続に重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、データの取り扱いに関するポリシーや手順を詳細に定め、全ての関係者がそれを遵守する体制を構築することが重要です。
移行については、既存システムから新システムへスムーズに移行する方法を決めます。データの移行やテスト、移行スケジュールの策定などが含まれ、特に移行期間中の業務への影響を最小限に抑えることが求められます。これにより業務の連続性を保ちながら、新しいシステム環境に迅速に適応することが可能になります。

これらの内容を要件定義で明確に明記し、関係者全員が理解・合意することで、システム構築後の本番運用開始後も安定した運用が可能となり、長期的なシステムの有効性を確保できます。

システムを使い続けるための対策

システム構築を完成させて終わりではなく、システムを長期的に使用するためには、定期的なバックアップを実施し、データの安全性を確保する必要があります。また技術の進化に伴い、システムの機能増加やセキュリティ要件が変化するため、最新の技術に対応したアップデートを計画的に行う必要があります。これにより、セキュリティの脆弱性を最小限に抑え、システムの安定性を維持することができます。
ユーザからのフィードバックを積極的に収集し、それに基づいた改善を行うことで、システムの使い勝手を向上させることができます。ユーザのニーズを理解し、それに応じた機能追加や調整を行うことで、ユーザの満足度を高め、システムの価値を維持することが可能です。

システムの運用に関わる従業員の教育も重要です。従業員がシステムの運用に必要な知識やスキルを常にアップデートできるよう、定期的なトレーニングなどを実施することで、システムの運用効率を高めることができます。運用中のトラブルを迅速に解決し、システムのダウンタイムを最小限に抑えることができます。
システムを定期的に評価し、必要に応じて改善策を講じることも重要です。この対策を講じることで、システムの長期的な利用をサポートし、柔軟な対応ができます。

テストで確認すべきこと

システムが要件定義で明確にされた仕様を満たしているかどうかを検証します。
具体的には、機能要件と非機能要件の両方を対象に、以下のポイントを重点的に確認します。
まずは、機能テストを通じて、各機能が正しく動作し、ユーザの期待に応えているかを検証します。この際、画面デザイン(UI)が直感的な操作性が確保されているかも確認する必要があります。
次に、非機能要件として、システムのパフォーマンスやスケーラビリティを確認します。負荷テストやストレステストを行い、通常の使用状況やピーク時のアクセスにも耐えうることを証明します。また、セキュリティテストを実施し、データの安全性を確保するために必要な対策が講じられているかを確認します。
互換性テストを実施し、システムが異なるデバイスやブラウザで正常に動作するかを確認します。これは、ユーザがさまざまな環境で同じようにシステムを利用できるようにするために必要です。
最後に、ユーザ受け入れテストを行い、実際のユーザがシステムを使用して問題がないかを確認します。これにより、要件定義で設定されたゴールが達成されているかを最終的に検証します。
すべてのテストを通じて、依頼者と開発者が要件定義で合意した基準を満たすことを確認し、システムのリリース準備が整っていることを証明します。

失敗例から学ぶ要件定義の教訓

要件定義の失敗から学ぶことは、プロジェクトの成功において重要になります。失敗例としてよく挙げられるのは、要件定義の段階でのヒアリング不足、文書化不足です。例えば、要件定義の内容が曖昧な表現であったため、開発途中で大幅な設計変更が必要になり、システム構築全体のスケジュールが大幅に遅延したというケースもあります。このような事態を避けるためには、初期段階での詳細な打ち合わせと、決定事項を議事録で明確にする必要があります。
開発者側のプロジェクトメンバーの体制不備も失敗の原因となります。特に、要件定義を担当するチームメンバーが経験不足であったり、適切なリソースが割り当てられていない場合、プロジェクトの進行に支障をきたします。これを防ぐためには経験豊富なメンバーを揃え、チーム全体での役割分担を明確にし、継続的なトレーニングを行うことが重要です。
要件定義の成功には綿密な計画と実行が求められます。プロジェクトの初期段階でのしっかりとしたベース作りが、後の開発段階でのスムーズな進行を支えるのです。

まとめ:システム構築の成否を分ける会社の選び方

システム構築を確実に成功させるためには、自社のビジネス課題を深く理解し、最後まで伴走してくれるパートナーを見つけることが重要です。価格や知名度だけでなく、実績が多くあり、セキュリティ面で信頼できるシステム開発会社を選ぶことが重要です。システム構築後の運用も必要になるため、運用体制まで確認しておくことも大切です。
ヤマトシステム開発では、システム構築で多くの業種での豊富な実績を基に要件定義から開発・運用までしっかりと支援します。システム構築でお悩みの際にはヤマトシステム開発へぜひご相談ください。

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