地方銀行の変革に必要なDX支援の戦略と施策

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地方銀行は融資などの既存の金融ビジネスの強化だけではなく、銀行法施行規制が改正されて業務範囲規制が見直され、従来の金融ビジネスの枠を超え、地域経済活性化のための非金融領域の新規ビジネスに参入する動きが活発になっています。この競争力を維持するためにはDXが不可欠ですが、推進するためには多くの課題があります。
地方銀行がDXを活用してどのように変革するのか、事例をまじえて解説します。
これは地方銀行が融資だけではない地域の課題解決パートナーとして存在意義を再定義するものであり、DXを通じて地域経済の発展に貢献する新しい形として注目されています。

目次

  1. 都市銀行と地方銀行の違い
  2. 地方銀行の現状
  3. 地方銀行に求められる変化
  4. 地方銀行のDXに関するビジネス参入事例
  5. ヤマトシステム開発の地方銀行さまへのDX貢献

都市銀行と地方銀行の違い

都市銀行とは、大都市に本店を構え、全国の主要都市に支店網を展開して広域に営業する日本の普通銀行です。「都銀(とぎん)」や「メガバンク」と呼ばれます。主な顧客は大企業や上場企業が多くなっています。
地方銀行とは、特定の地域に本店を置き、その地域を主な営業基盤として活動する日本の普通銀行です。「地銀(ちぎん)」と呼ばれます。主な顧客は地域の中小企業や個人が多くなっています。加盟している協会や設立経緯によって、「地方銀行(第一地方銀行)」「第二地方銀行」の2つに分類されます。どちらも地域経済の活性化と発展に貢献しています。
都市銀行、地方銀行ともに同じ銀行ですが、展開するエリアなどに違いがあります。

地方銀行の現状

近年の地方銀行は、低金利の長期化により、従来の収益モデルでは十分な利益を確保することが難しくなっています。

地銀再編とは

地銀再編の動きが2000年代以降に本格化したのは、金融庁による働きかけが大きなきっかけです。
2013年10月金融庁の「地域金融の現状・課題とその方向性」を皮切りに、2014年1月の当時の長官が各銀行に業務提携や経営統合などの経営課題を検討するよう促したことで、地域再編の流れが進んだと言われています。

損益状況の推移

地方銀行数は2013年には105行でしたが、2018年は104行、2023年は99行と減少傾向にあります。地銀再編の動きを受けて減少傾向にあり、それに伴い行員数も減少傾向です。この期間では都市銀行数に変化はありません。

  2023年度 2022年度 2018年度
業務粗利益 39,164億円 37,252億円 41,097億円
実質業務純益 11,313億円 9,998億円 11,830億円
人件費(経費) 13,579億円 13,541億円 14,729億円

業務粗利益は、2018年度から2022年度は3,845億円減少(約90.6%)していますが、2022年度から2023年度は1,912億円増加(約105.1%)しています。
実質業務純益は、2018年度から2022年度は1,832億円減少(約84.5%)していますが、2022年度から2023年度は1,315億円増加(約113.2%)しています。急速に業績が回復していますが、2018年度の水準にはまだ完全には戻っていません。
経費の中の人件費は、2018年度から2022年度は1,188億円減少(約91.9%)していますが、2022年度から2023年度は38億円増加(約100.3%)と横ばいです。

地銀再編を通じて事業の効率化を進めているものの、経費が上昇し利益を圧迫しています。地方銀行における損益は赤字傾向にあったものの、最近では回復傾向にあります。
その背景の1つに既存金融ビジネスの強化や、新規ビジネス(非金融領域)への参入があります。

【引用元】
預金保険機構
一般社団法人全国銀行協会

市場の変化

融資先である中小企業の数は年々減少しています 。倒産件数も増加していて、人手不足の中でも特に「求人難」や「人件費高騰」が主な要因です。長引く低金利で、中小企業や個人への融資のビジネスモデルだけでは利益を拡大することが難しくなっています。
地方の人口減少も加速しており、地域経済の規模縮小とそれに伴う資金需要のさらなる低下が見込まれています。
今後は本業以外の非金融領域を踏まえた業務拡大が望まれている中、2021年11月に銀行法施行規制が改正され、市場が変化しています。

地方銀行に求められる変化

地方銀行は、地域経済の中核を担う存在として、急速な市場変化やDX推進やデジタル化の波に対応する必要があります。これを実現するためには、既存の金融ビジネスの強化と新規ビジネス領域への参入が重要です。
既存の強みを活かしながら、新たなビジネスチャンスを探求し、地域社会と共に成長することが不可欠です。

既存金融ビジネスの強化

地方銀行では、「既存の金融ビジネスの盤石性の強化」に取り組んでいます 。
「ヒト・モノ」に対して変化が求められる背景には、「再編や人員の合理化のスピードを上回る経費率の上昇」があります。経営効率化のため、地方銀行同士の再編や銀行間のアライアンスを行っています。
「カネ」に対して変化が求められる背景には、「従前の融資ビジネスの収益性の悪化」があり、金利の低下や中長期的な資金ニーズの低減が考えられます。越境融資(地元以外への融資)の増加を行い、取引量を増加させ、2021年11月に銀行法施行規制が改正され、銀行が事業会社の株式を、5%を超えて保有するための例外的な措置が拡充されました。この規制緩和を受け、融資から投資へ変化させ投資会社の設立を行っています。
このような取り組みにより、既存金融ビジネスの強化を図ることが、地方銀行が今後も市場での競争力を維持し続けるための鍵となります。

新規ビジネス(非金融領域)への参入

地方銀行では、既存の金融ビジネスだけに留まらず、2021年11月に銀行法施行規制が改正され、業務範囲規制の見直しがされました。従来は「固有業務(預金又は定期積金等の受入れ、資金の貸付け又は手形の割引、為替取引)」「付随業務」「他業証券業務」「法定他業」に限定されていましたが、改正によって業務範囲が緩和され、新たなビジネスに参入しています。

銀行本体が認められた参入業務

自行アプリやITシステムの販売 自社での単独もしくは他社との共同でシステムの設計・開発・保守業務の提供やプログラムの設計・作成・販売・保守に関わる
データ分析・マーケティング・広告 広告・宣伝・調査・情報の分析や情報の提供を行う
登録型人材派遣 銀行の利用者に対して、高度の専門性を有する人材や経営改善に貢献できる人材の派遣
幅広いコンサル・マッチング 経営に関わる相談の実施や顧客の紹介を含む情報の提供及びアドバイスの提供

 

銀行の子会社・兄弟会社が認められた参入業務

フィンテック 情報通信技術を活用した当該銀行における銀行業の高度化、利用者の利便性向上に関わる
地域商社(在庫保有、製造・加工原則なし) 地域において生産・提供される商品やサービスの販売や提供を行う
自行アプリやITシステムの販売 銀行本体と同様
データ分析・マーケティング・広告
登録型人材派遣
ATM保守点検 他事業者を含むATMの保守や点検
障害者雇用促進法に係る特例子会社 障害者雇用を促進する目的で、銀行が保有できる子会社
地域と連携した成年後見 高齢化社会の進展に伴い、単なる預金管理に留まらず、地域の福祉ネットワークの一員として積極的に貢献


このような取り組みは、地方銀行の収益基盤を多様化し、長期的な成長を支えるだけでなく、地域経済の活性化にも寄与することが期待されています。非金融領域への参入は、地方銀行にとって地域との密接な関係をさらに強化する機会であるとともに、DX(最先端のデジタル技術を戦略的に活用し、経営体制に変革をもたらすこと)推進への期待があります。

地方銀行のDXに関するビジネス参入事例

地方銀行が新たなビジネス領域へ参入する動きが注目を集めています。地域経済の活性化を目指す地方銀行では多岐にわたる分野に進出しています。DX推進により多くのサービスの提供が可能となります。

IT領域への参入

中国地方に拠点がある地方銀行は、地域の中小企業のシステム投資が低いことや業務効率化への関心・ニーズがあることは認識していましたが、対象となる中小企業へのアプローチはできていませんでした。
そこでソフトウェアを開発・販売している会社と協業することにしました。法人コンサルティング部を新設、専門のITコンサルティング担当者を配置しました。行員が営業担当者となりサービスの販売が行えるよう育成し、中小企業にツールの導入から運用までをハンズオンで支援しています 。

ビジネスマッチング領域への参入

関西地方に拠点がある地方銀行では、さまざま経営課題に対しワンストップで対応できるサービスのニーズを受けて、ただの企業間マッチングにとどまらない、様々な企業やサービスとマッチングできるプラットフォームを提供しています。
具体的には、ビジネスマッチング(企業同士のマッチング)、オープンイノベーション(新技術・サービスの創出をサポート)、情報・メディア機能(地域に応じた補助金・助成金情報の展開)、士業相談などを行っています。

専門コンサルティング領域への参入

九州地方に拠点がある地方銀行では、SDGsコンサルティングに取り組んでいます。
SDGsへの関心の高まりを受け、専門の法人コンサルティング部SDGsチームを立ち上げ、お客さまが開催しているSDGs委員会に参加し、意見の集約を行いながら方向性を示すなどのファシリテートを行っています。
コンサルティングの流れは、以下の通りです。
ステップ1現状の把握と分析: 目標と取組みを紐づけし、バリューチェーン分析の実施
ステップ2宣言案作成: 分析結果をもとに、目標達成のための行動計画を立て、宣言案を作成
ステップ3実行と社内への展開: SDGs登録申請、勉強会などを通じて全社員の理解を深め、次年度の計画策定へ盛り込み

地域商社領域への参入

ECの発達で販路拡大の好機が訪れていますが、地域の事業者ではマーケティングや販売を担う人材がおらず、その機会を活かしきれていません。マーケティングや企画(上流)から、販売代行や物流(下流)までを一貫して支援する地域商社が期待されています。
中国地方に拠点がある地方銀行を含む企業5社では、大きく分けて3つのサービスを展開しました。

1.マーケティング戦略立案支援: 市場調査や分析を実施、最適なターゲットや価格設定を導き出すなど、戦略の立案から実行まで一貫してサポート
2.企画開発支援: 新商品開発や技術の活用や、お客さまが持つ商品の価値向上につながる支援を提供
3.販路開拓支援: 新たな販売先の紹介や販売代行など、お客さまの商品をより多くのお客様のもとへ届けるための販路拡大を支援

このような参入事例は、地方銀行の存在意義を再定義し、地域社会に貢献する新しい形です。地方銀行には、これからもDXを通じて多様なビジネスチャンスを追求し地域密着型の金融機関としての役割を強化し、地域経済の発展に大きく寄与することが期待されています。

ヤマトシステム開発の地方銀行さまへのDX貢献

今回4つの新規ビジネスへの参入事例を紹介しましたが、まずは既存金融ビジネスの強化から行ってみるのはいかがでしょうか。ヤマトシステム開発では、地方銀行が直面するDXの課題に対し、さまざまなソリューションを提供しています。
まずはアナログ業務のデジタル化を進めるために、本人確認のデジタル化(公的個人認証やオンライン本人確認)や、FAX送受信のデジタル化など、身近な業務からDX推進を行ってみてはいかがでしょうか。

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