ペーパーレスとは?企業が推進する目的とポイント・対象書類について

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企業が取り組むべき課題として、ペーパーレスは以前から注目されてきました。2022年に改正電子帳簿保存法が施行されたことで、ペーパーレス化に取り組む企業は増加しています。

これまでの紙媒体で不都合なく業務を進めてきた企業にとっては、ペーパーレス化は導入のハードルが高く感じられ、なかなか踏み切れずにいることも多いと思います。国を挙げて推進しているペーパーレスとはなにか、取り組むべき具体的な理由について解説します。ペーパーレス化をもっと進めたいと検討している企業の方も、これから導入を検討している企業の方も参考になればと思います。

目次

  1. ペーパーレスとは?
  2. ペーパーレス化はなぜ必要?
  3. ペーパーレス化とFAX文書
  4. ペーパーレス化を企業が求められる背景
  5. ペーパーレスの対象となる書類は?
  6. まとめ:ハードルは高く感じても早期対応を

ペーパーレスとは?

ペーパーレスとは、紙(ペーパー)をより少なく(レス)すること、それまで「紙」で運用していた仕組みを変えて、紙を使わないことを意味します。日常でも、電子書籍やコンサート、飛行機のe-チケット、交通系ICカードなどはペーパーレスの一環です。

昨今のビジネスにおいて積極的に進められている「ペーパーレス化」とは、これまで運用されていた紙媒体をデジタルデータへと変換して活用・管理・保存を行い、紙(ペーパー)を極力利用しない取り込みのことです。このように紙媒体を電子媒体(デジタルデータ)に変換することを電子化といいます。ペーパーレス化とはつまり電子化のことをいい、その違いはありません。

ペーパレス?ペーパーレス?どっち?

ペーパーレスはペーパレスとも呼ばれます。もともとは、IT系資格であるシステムアドミニストレータ試験で「情報のやりとりの効率化と、紙の節約を目的とする」仕組みとして「ペーパレス」と表記されました。現在ではペーパーレスと呼ぶことが多いようですが、ペーパーレスとペーパレスは同義です。

ペーパーレス化はなぜ必要?

近年、ビジネスの観点からペーパーレス化が注目され、企業での推進が活発です。ペーパーレス化の目的はなんでしょうか。

業務効率化

まず挙げられるのは業務の効率化です。
コロナ禍を経て、私たちの就業形態は多様に変化しました。資料の閲覧や回覧文書などのためにオフィスなど一つの場所に縛られていては業務が捗りません。しかし、デジタル化した資料をデータベースに保存しておくことで、場所や時間を選ばずインターネット環境を通じて文書の作成、編集、閲覧が行えるのです。

日々作成される資料や文書を紙ペースで管理を行っていると、膨大な資料から必要とする文書を探し出すのに時間も手間も必要とします。しかし、電子化したデータであれば情報検索性が増し、すぐに手元で確認することができます。加えて、資料の即時修正や、協働者・外部と資料共有するのも容易である点も特徴です。

業務効率を上げるためには、個々人の持つ情報を、どれだけスピードよく連携できるかが重要であり、情報の検索性や一元化、見える化が求められます。このように業務情報の電子化は生産性を格段に上げます。

コスト削減

ペーパーレス化によって、コスト削減も期待できます。
従来通りの紙媒体管理には、紙代、トナー代などの印刷コストがかかります。それ以外にも、印刷物の保管用スペース費、管理に要する人件費、機密文書を廃棄する場合の処分費、郵送する際の郵便代などのコストがかかっています。紙媒体管理をペーパーレス化することで、印刷することも、保管場所に苦慮することもなく、その部分をコストカットできます。

BCP(事業継続計画)対策

ペーパーレス化はBCP対策としても有効です。 BCP対策とは企業におけるリスクマネジメントのひとつであり、災害が発生した際にも速やかな復旧と事業存続ができる体制を整えるよう事前に対策を講じることをさします。 万一、地震や水害、火災などでオフィスを消失するほどの被害にあった場合、紙ペースのデータでは焼失、損失してしまい、すべてを失う恐れがあります。その点、電子化したデータをサーバやクラウド上に保存しておくことで、オフィスを失っても、大切な書類・文書は別の端末からデータを閲覧・編集することができ、速やかに復旧し事業継続が可能になります。

企業価値向上

ペーパーレス化はSDGsの取り組みのひとつとして、企業価値/イメージ向上につながります。SDGsとは、17のゴールと169のターゲットから成る、「サステナブル(持続可能)な世界」を目指し国連が定めた指針です。具体的にペーパーレスはSDGsで次の4つの目標に貢献可能とされています。



8番 働きがいも経済成長も
12番 つくる責任 つかう責任
13番 気候変動に具体的な対策を
15番 陸の豊かさも守ろう

ペーパーレス化を進める企業はSDGsに積極的に取り組む企業として認識されます。

このようにペーパーレス化の目的となるメリットは多くあります。しかしまた、デメリットも存在します。ペーパーレス化のメリット・デメリットについては、以下関連コラムページにて詳しく解説します。


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ペーパーレス化とFAX文書

FAX文書に関しては電子帳簿保存法の改正前と後で求められる対応が変わりました。 通常のFAXは原稿を読み取り送信しますが、相手側が受信後印刷することを想定したやり取りです。これは書面による取引と解釈されて、電子帳簿保存法の対象外になり、ペーパーレスではありません。

これに対してペーパーレスファクス機能を持った複合機が登場しており、これによる送受信に関しては、当該取引は電子取引と解釈されるため、電子帳簿保存法に対応する必要があり、ペーパーレスなやり取りといえます。

従来通りのFAXでのやり取りではここまで見てきたペーパーレス化の恩恵はありません。 相手先に送信するときFAX機に読み取らせるため、まずプリントアウトをする必要があり、先方に着信後も紙媒体で扱います。これでは送受信双方に紙代、紙の印刷代などが負担となり印刷コスト削減にはなりません。 紙媒体が介在するため、書面による取引と見なされ、紙媒体での保存・管理が必要になります。加えて、添付する送付状作成、着信したFAX用紙の管理などにかかる人員コストがあり、保管場所にもコストが発生します。書類保管後の情報検索性も格段に低く、これでは業務効率は下がる一方です。

ペーパーレス化とFAXについては以下関連コラムページにて詳しく解説します。

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ペーパーレス化を企業が求められる背景

ペーパーレスは電子化するビジネスの大事な一歩であり、2019年施行の働き方改革推進法でもペーパーレス化は具体策として盛り込まれています。

政府が推進するペーパーレス化

日本政府は、2000年代初頭に制定したIT基本法やe-Japan戦略以来、電子政府実現に向けて取り組んできました。進展には時間がかかっていましたが、ITを巡る技術革新や、続々と進められてきた法の整備もあり、近年取り組みは急加速しています。政府は「行政サービスの100%デジタル化」を掲げ、実現までそう遠くはありません。

これまで多くの企業でペーパーレス化に取り組んできましたが、社内で完結してしまうことが大きく進歩しない要因でした。社内でペーパーレス化が進んでも、取引先との見積書・請求書等のやりとりや、行政への届け出において電子化データの形が認められなければ、結局紙への印刷が必要になります。社外からの文書が紙媒体であればそのまま保存する必要があり、時間と人員と保管場所が必要な状態でした。外部とのやりとりでペーパーが介在していたのでは、ペーパーレス化も中途半端に終わってしまいます。企業としてもシステムに投資することは二の足を踏んだことでしょう。しかし、今、電子政府実現が現実味を帯びてきました。政府は官民連携したペーパーレスな電子政府(デジタル・ガバメント)を目指しています。

また、政府は自らが実現したデジタル化を地方自治体や民間と連携していくロードマップを引いています。官民の取引や情報共有がデジタル化されれば、民間企業同士でもその仕組みを利用したペーパーレスな取引を発展させることになります。

近い将来、ペーパーレス対応が政府調達等の条件になる可能性も高く、これまでの制度施行の例にもれずスタートダッシュで利をとることは大きなビジネスチャンスになります。企業にとって将来に向けた取り組みをいち早く始めることが肝要になってきます。

書類の電子化に関わる主な法律

書類の電子化のルールはさまざまな法律で定められています。主なものをご紹介します。

【デジタル改革関連法】
デジタル技術の普及と活用を促進し、国民生活や経済活動を支えるデジタルインフラの整備を目指す法律

【電子署名法】
正式には「電子署名及び認証業務に関する法律」といい、これにより電子署名サービスを用いた電子署名を施すことで、法的効力のある電子契約等を作成することができるようになりました。

【電子帳簿保存法】
国税に関する帳簿や書類などの電子保存を認める法律
電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つの方法が認められています。

【e-文書法】
民間企業において保存義務のある各種書面について電子化を認める法律
法人税法や会社法、商法、証券取引法などで保管が義務づけられている文書や帳簿、請求書、領収書など、対象は多岐にわたります。

【IT書面一括法】
書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律
紙媒体での交付・提出が必須とされていた書類について、電子メールやFAXなどの電磁的手段による交付・提出を認める法律です。

ペーパーレスの対象となる書類は?

具体的にどのような書類や資料、文書がペーパーレス化の対象となり得るでしょうか。まずは企業内で活用する文書です。会議資料を紙媒体での配布を取りやめ、デジタル化した資料をパソコンやタブレットなどの端末で閲覧し、ホワイトボードの板書はせず、デジタルデータとして共有する、いわゆる「ペーパーレス会議」と呼ばれる会議は既に多くの企業で行われています。

紙の資料に依存しないため、どこかの拠点に配布物を取りに行く必要もありません。サーバやクラウドを通じて、またはメールを利用して資料共有が容易になります。また、後々資料や議事録が必要になった時にも情報検索性を活かしてすぐに確認することができます。

また、企業間で取り決めが成立していれば請求者や契約書に至るまで、企業外とのやり取りも電子化したデータでやり取りを完結することも可能です。

書類をデジタル化して効率化を図れるものは次のようなものが上げられます。


以前は紙媒体での作成・保存が義務化されていた書類でも、近年法改正などの電子化の流れを受け、徐々に解禁されています。

ペーパーレス対象外となる書類

ビジネスで扱う多くの書類、文書がペーパーレス化可能です。しかし、現在のところまだ電子化が認められておらず、法律上、紙媒体で作成・管理することが義務付けられる資料や書類が存在します。

紙媒体で作成が必要な書類:
現状、公正証書で作成する必要のある契約書は紙媒体でしか作成できません。
公証人がその権限に基づいて作成する公文書である公正証書は、現状、紙媒体での作成のみ認められています。しかし、政府は今後について2025年までにデジタル完結できることを目標に掲げています。

スキャナ保存ができない書類:
国税関係書類のうち、棚卸表、貸借対照表、損益計算書などの計算、整理または決算関係書類はスキャナ保存が認められず、紙で保存しておく必要があります。

緊急時に即時閲覧する必要がある書類:
災害対策マニュアルや安全手引きなど、緊急時にすぐ確認できなくては意味がありません。停電や災害などの緊急時には電子化文書は閲覧できなくなる可能性があるため、ペーパーレス化は認められていません。

現物性が高い文書:
免許証や許可証など現物が効力を発揮する文書の場合、従来通り紙媒体での保管が必要です。

まとめ:ハードルは高く感じても早期対応を

これまで紙媒体で不都合なく進めていた業務を運用から見直すことになるため、導入のハードルは高く感じられることでしょう。 しかし、政府は行政サービスを100%電子化する姿勢を見せ、電子政府(デジタル・ガバメント)は実現目前に迫っています。政府主導で進められるペーパーレスが制度化されたとき、政府調達の条件ともなれば、それからの対応では遅きに失します。企業はビジネスチャンスを逃さないためにも早急な対応を検討すべきときだといえます。

一般的なビジネス文書以外でもペーパーレス化の対象はいろいろあり、ヤマトシステム開発でもさまざまなサービスでお客さまのサポートを行っています。ペーパーレスの導入をお考えであれば、是非一度ご検討ください。

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