企業のためのサイバーセキュリティリスク管理ガイド①

サイバー攻撃の手口は日々巧妙化しており、企業は脅威にさらされています。ひとたび被害に遭えば、情報漏えいや長期間の業務停止だけではなく、社会的信用の失墜といった深刻な経営リスクに直結します。
このような見えない脅威から企業を守り、強固なセキュリティ環境を構築するためには、攻撃が本格化する前に兆候を捉える方法が有用な手段です。有効な防衛策となるのが、24時間365日体制で監視するシステム監視ツールの導入です。システム監視ツールによって不審なプログラムの挙動や異常なアクセスを早期に検知し、被害が拡大する前に迅速な遮断や隔離を行うことで、サイバー攻撃を低減させることにつながります。
企業における情報セキュリティ脅威
独立行政法人情報処理推進機構は2026年1月、情報セキュリティ10大脅威2026を発表しました。
巧妙化するサイバー攻撃への対策は必要不可欠です。万が一被害に遭えば、機密情報の漏えい、システム停止、社会的信用の失墜といった甚大な経営リスクに直結します。サイバーセキュリティ対策は単なるシステム部門の課題ではなく、企業全体で取り組むべき重要な課題となっています。
前半は、情報セキュリティ10大脅威2026の中の「ランサム攻撃」「システムの脆弱性を悪用した攻撃」「DDoS攻撃」の3つに絞って、攻撃の内容、攻撃方法、攻撃を防ぐための基本対策を解説いたします。
【引用元】情報セキュリティ10大脅威2026(独立行政法人情報処理推進機構)
ランサム攻撃による被害
現代のサイバーセキュリティにおいて脅威の一つとされるランサムウェア(Ransomware)とは、ランサム(Ransom・身代金)とソフトウェア(Software)を組み合わせた造語です。企業のサーバやパソコンやスマートフォンなどに感染し、保存されているデータを暗号化して使えなくして、「元に戻してほしければ身代金を支払え」と要求してくる悪意のあるマルウェアのことです。
ランサム攻撃の方法
一般的なランサム攻撃は、次のような流れで行われます。
- 侵入・感染: 不審なメールの添付ファイルを開くこと、偽のWebサイトに流入すること、システムの弱点(脆弱性)を突いてネットワークに侵入することなどが該当します。
- 暗号化: 侵入したデバイスや、そこからつながっているネットワーク上のデータを暗号化し、ファイルを開けない状態にします。
- 身代金の要求: 画面上に「データは暗号化した。〇時間以内に暗号資産を支払え」などという脅迫文を表示させます。
最近では、データを暗号化して使えなくするだけでなく、事前にデータを盗み出しておき、「身代金を払わなければ、盗んだ機密情報や個人情報をインターネット上に公開する」と二重に脅迫してくる手口も増えてきて、非常に悪質化しており、企業におけるサイバーセキュリティ対策を見直すことも必要になります。
ランサム攻撃を防ぐ基本対策
現実世界の盗難対策と同様に、日々の基本的な備えが、感染のリスクを下げる鍵になります。ランサム攻撃を防ぐ基本対策として以下の方法があります。
- バックアップを定期的に取る: データを暗号化されるリスクに備え、定期的にバックアップを取ります。ただし、バックアップデータ自体も暗号化されないよう、ネットワークから切り離した場所に保管する必要があります。
- OSやソフトを常に最新にする: 脆弱性(古い・弱い部分)が狙われやすくなります。こまめにアップデート(更新)を行い、システムに侵入されるリスクを減らします。
- 不審なメールやリンクを開かない: 心当たりのないメールの添付ファイルや、URLをクリックしないようにし、マルウェアをダウンロードしてしまうリスクを減らします。
- セキュリティソフトを導入する: 悪意のあるソフトウェアの侵入を検知・ブロックし、被害が拡大するリスクを減らします。
システムの脆弱性を悪用した攻撃
OSやソフトウェア、ネットワーク機器などに潜むプログラムの欠陥や設計上の脆弱性を狙い撃ちにする手法です。
システムの更新プログラム(パッチ)を適用せずに古い状態のまま放置することは、攻撃者に格好の侵入経路を与える場合があり、マルウェア感染といったリスクにつながります。ソフトウェアを常に最新の状態に保ち、システムの弱点を継続的に塞ぐことが、企業のサイバーセキュリティにおける基本的かつ重要な防御策となります。
脆弱性を悪用した攻撃の方法
一般的なシステムの脆弱性を悪用した攻撃は、次のような流れで行われます。
- 標的の探索(スキャン): 攻撃者は、インターネット上を自動で巡回するツールなどを利用して、更新プログラム(パッチ)を当てていない古いシステムを持つ企業を常に探します。
- 攻撃コード(エクスプロイト)の実行: 脆弱性を見つけると、バグを意図的に誤作動させるための特殊なデータやプログラム(エクスプロイトコード)を送り込みます。
- 内部への侵入・目的の実行: システムが誤作動を起こしてセキュリティの壁が崩れた隙を突き、マルウェア(ランサムウェアなど)を感染させたり、管理者権限(システムを自由に操作できる権利)を奪って機密情報を盗み出したりします。
脆弱性を悪用する攻撃の中でも、よく使われる具体的な手口には以下のようなものがあります。
- ゼロデイ攻撃: ソフトウェアの開発元が脆弱性に気づく前、あるいはそれを直すための、更新プログラム(パッチ)が提供される前(0日目)に行われる攻撃です。防御側は無防備な状態で攻撃を受けるため、危険な手口の一つです。
- バッファオーバーフロー攻撃: システムが一度に処理できる記憶容量の限界を超える大量のデータを送りつけて、システムをパンク(オーバーフロー)させて誤作動を起こさせる手口です。この混乱に乗じて悪意のあるプログラムを実行させます。
- Webサイトの入力フォームを狙う攻撃: 企業のWebサイトにあるお問い合わせフォームなどに、特殊な文字列(命令文)を入力し、裏側にあるデータベースを不正に操作して、登録されている情報を丸ごと盗み出す手口です。
脆弱性を悪用した攻撃を防ぐ基本対策
システムの脆弱性を悪用した攻撃から企業を守るためには、根本的な原因となるシステムの弱点を減らし、万が一の侵入に備える多層的な防御が求められます。サイバーセキュリティにおいて、OSやソフトウェア、ネットワーク機器などに潜むプログラムの欠陥や設計上の脆弱性を減らすための基本対策は開発元から提供される更新プログラム(パッチ)を速やかに適用し、システムを常に最新の状態に保つことです。
攻撃者は、すでに修正プログラムが公開されているにもかかわらず、適用を怠っている古いシステムを狙うことがあります。そのため、社内でどのようなIT資産を利用しているかを正確に把握し、パッチの適用漏れがないかを一元管理する仕組みを整えることがリスク低減につながります。
修正プログラムが提供される前のゼロデイ攻撃や、業務の都合ですぐにシステムを更新できない環境への対策として、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)やIPS(不正侵入防御システム)などの専用機器を導入することもリスク低減につながります。
DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)
DDoS攻撃とは、複数のコンピュータから一斉に特定のWebサイトやサーバへ大量のデータや通信を送りつけ、システムをパンクさせてダウンさせるサイバー攻撃です。現代のサイバーセキュリティにおいて、この攻撃は企業のサービスを強制的に停止させる可能性のある重大な脅威となっています。
攻撃者は、マルウェアなどで乗っ取った機器を遠隔で操り、標的に向けて一斉にアクセスを集中させます。正常なアクセスと攻撃を見極め、攻撃(異常な通信)だけを検知し遮断することで、システムを止めない運用を行うことが大切です。
DDoS攻撃の方法
一般的なDDoS攻撃は、次のような流れで行われます。
- 攻撃の準備(ボットネットの構築): 攻撃者はまず、セキュリティの甘いパソコンやサーバなどにマルウェアを感染させ、遠隔操作できるボットを大量に作り出します。この乗っ取られた機器の群れを「ボットネット」と呼びます。
- 攻撃の指示(司令塔からの命令): 準備が整うと、司令塔であるC&C(コマンド&コントロール)サーバから、世の中に散らばっているボットに向けて「標的のサーバへ一斉にアクセスしろ」などの命令を出します。
- 攻撃の実行(大量通信の発生): 命令を受けた多くのボットが、一斉にターゲットのWebサイトやサーバへ大量のアクセスやデータを送ります。
- サービスの停止: ターゲットのWebサイトやサーバは、膨大な通信を処理しきれずにパンク状態(オーバーフロー)に陥ります。その結果、本来の正規ユーザがWebサイトにアクセスできなくなったり、サーバが完全に停止します。
DDoS攻撃で、大量のアクセスやデータを送りつける種類にもいくつかあります。よく使われる手口は以下のようなものがあります。
- ボリューム型攻撃(帯域消費型): 大量の無意味なデータを送りつけ、ネットワークの回線を渋滞させてパンクさせる、力技の攻撃方法です。
- プロトコル型攻撃(状態枯渇型): サーバやネットワーク機器が通信を処理する仕組みの弱点を突き、機器の処理能力(CPUやメモリ)を枯渇させる攻撃です。
- アプリケーションレイヤ型攻撃: 正規ユーザがWebサイトを閲覧するのと同じような「正規の通信」を装う手口です。ログイン処理や検索処理など、サーバに負荷のかかる処理を大量に要求してダウンさせるため、正規アクセスと攻撃の見分けがつきにくく、厄介な攻撃です。
DDoS攻撃を防ぐ基本対策
DDoS攻撃は、正規アクセスに紛れて大量のデータを送りつけてくるため、通常の機器だけでは防ぐことが困難です。DDoS攻撃のリスクを最小限に抑えるためには、大量の通信をさばける専用のセキュリティ対策が必要となります。基本対策としては、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)やWAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)、DDoS防御に特化したサービス導入があります。このサービスは、大量のデータを巨大なサーバ群で分散し吸収したり、悪意のある通信だけを自動で見分ける役割を果たします。自社のシステムがパンクする手前で攻撃を無効化する仕組みを整えることが、有効な防御策となります。
システム監視ツールを導入して防ぐ方法
システム監視ツールとは、企業が利用するサーバやネットワークなどが、正常に稼働しているかを24時間365日体制で監視し続ける仕組みのことです。システム障害による業務停止や、外部からのサイバー攻撃による情報漏えいは、企業にとって致命的な経営リスクとなります。
システム監視ツールは、普段とは異なる異常なデータ通信や、不審なプログラムの動作といった危険な兆候をいち早く検知し、管理者に通知します。被害が拡大する前に該当箇所の隔離や遮断をして、被害を最小限に抑えることができます。セキュリティ対策を根底から支え、見えない脅威から企業を守る役割を担っています。
ランサム攻撃に対する有効性
ランサムウェアは、企業のサーバやパソコン、スマートフォンなどに侵入し、データを暗号化して業務を停止させる重大なリスクを持っています。
この脅威から守るセキュリティ対策としてシステム監視ツールを活用することで、普段は使わないようなプログラムが突然動き出したり、大量のファイルが猛スピードで書き換えが始まるといった不審な兆候を検知できます。そして、被害が広がる前に、該当するサーバや端末をネットワークから素早く隔離し被害拡大のリスクを低減します。
システムの脆弱性を悪用した攻撃に対する有効性
脆弱性を突く攻撃は、OSやソフトウェア、ネットワーク機器などに潜むプログラムの欠陥や設計上の脆弱性を狙う手法であり、情報漏えいやシステム停止といったリスクをもたらします。
強固なセキュリティ環境を維持するためには、外部から入ってくる通信を監視し、システムの弱点を狙う悪意のあるデータと検知した際にその通信を自動で遮断します。また、OSやソフトウェアにまだ見つかっていない脆弱性がないかを継続的にチェックし、リスク発生の可能性を最小限に抑えます。
DDoS攻撃に対する有効性
DDoS攻撃は、正規のアクセスに紛れて大量のデータを送りつけ、システムをパンクさせてダウンさせるサイバー攻撃であり、長時間のサービス停止という重大なリスクをもたらします。
このリスクに対するセキュリティ対策として、普段のデータ量と比べて異常な量のアクセスが集中し始めたという兆候を早期に検知できます。このような異常を検知することで、悪意のある大量の通信だけを弾き返す(フィルタリングする)仕組みへスムーズに切り替えることができます。
システム監視ツール
システム監視ツールには、いくつか種類があり、どこまで任せるかによって変わってきます。
異常検知と通知のみを行うツール
ネットワークやサーバを監視し、異常(マルウェア検知、異常な負荷など)があれば、担当者にメールやチャットで通知します。
導入費用が比較的安く、手軽に始められますが、通知を受け取った後の復旧作業は、自社で行う必要があります。夜間や休日に通知が届けば、担当者が対応する必要があります。
初期対応や自動復旧を行うツール
異常検知するだけでなく、あらかじめ設定しておいた対応手順書に従って、ツール自身が初期対応を行います。
例えば、不審な動きをしたパソコンをネットワークから隔離する、ダウンしたサーバを再起動するといった作業をおこないます。自社の担当者の負担は軽減しますが、導入費用が高価で、自社の環境に合わせた初期設定が必要になります。
監視から復旧まで任せるサービス
専門の技術者が24時間365日有人体制で監視し、復旧まで代行してくれるサービスです。
ツールだけでは判断できない複雑な障害対応、業務が属人化しないための運用手順書作成まで対応します。自社にITプロフェッショナルが在籍していなくても、セキュリティと運用体制を維持できます。
システムの異常検知と通知を行うツール
ヤマトシステム開発では、初期費用なし、月額3.5万円(税抜き)で、24時間365日有人監視体制が可能な「システム監視ミニ」を提供しています。
お客さまのネットワーク配下に、設定済みの監視用小型サーバを設置するのみで本番稼働がスピーディに実現できます。複雑な初期設定や、長期にわたる準備期間は不要です。
すぐにシステムの異常検知と通知から始めたい、まずは一部のシステム監視を開始したいなどのスモールスタートができ、監視対象のシステムの追加も柔軟に対応できます。
システムの異常検知から復旧対応まで行うサービス
そのほかにも、24時間365日有人監視をし、異常検知と通知だけではなく、システム運用・監視・保守・障害復旧対応まで対応する「システム運用監視サービス」も提供しています。
インフラ構築から運用設計、日々の監視、手順書作成、ヘルプデスクまで、情報システム部門の業務を幅広くサポートします。自社データセンターを拠点に夜間や休日でも専門スタッフが迅速に対応し、担当者の負担や障害時のリスクを大幅に軽減できます。オンプレミス、クラウド(AWS、Azure など)を問わずお客さまの環境やご要望に応じて、適切なサポートをします。
夜間・休日の障害対応による担当者の負担軽減、運用コストの最適化に悩む企業にとって、有効なシステム監視ツールとなります。
関連サービス

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