効率的な書類管理を実現!株主総会書類のデジタル保管

株主総会は会社の経営状況を報告し、重要な意思決定を行う場です。株主総会は多くの書類が必要となるため、ペーパーレス化とデジタル保管が特に注目されています。デジタル保管は、書類の検索や共有を迅速かつ簡単にし、物理的な保管スペースを削減するだけでなく、環境保護にも貢献します。また、セキュリティ対策やBCP対策も強化され、法的な要件を遵守しやすくなります。本文章では、株主総会におけるデジタル保管の利点や具体的な手順について詳しく解説し、企業が書類のデジタル保管を進めるための方法をご紹介します。
株主総会の基本知識
株主総会は、会社の経営状況を報告し、重要な決定を行うための場です。ここでは定時株主総会の目的や法的要件について解説します。必要な要件を遵守することで、法的なトラブルを未然に防ぎ、株主総会が適正に運営されることを確保します。
定時株主総会の目的
定時株主総会とは、毎事業年度の終了後一定期間内に開かれる株主総会です。会社法第269条に定められており、株式会社は必ず開催しなければなりません。株主に対して当期事業年度の事業報告や計算書類などの報告、提出を行う必要があり、そのほかにも剰余金の配当の決定や役員の選任・解任の決定、次年度の事業に向けた基本方針などを決定する目的があります。
定時株主総会は、会社の財務状況や経営状況について詳細に議論され、株主が会社の方針を決定するための重要な場です。会計監査人の意見を聞くことで株主は多角的に情報を得て、より正確な判断を下すことができます。
法的要件と義務
定時株主総会には、会社法第296条に基づく厳格な法的要件と義務があります。以下に主要な内容を示します。
会社法第269条第1項に「定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。」と定められており、毎事業年度終了後上場企業は3か月以内、非上場企業は2か月以内を目安に開催しています。法人税の申告が事業終了後の2か月以内のため、3月末に事業年度終了企業が多いことから、5~6月ころ開催が集中します。
会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は定時株主総会に出席して意見を述べなければなりません。
必要書類については事項で解説いたします。
このような要件と義務を遵守することで、法的なトラブルを防ぎ、株主総会が適正に運営されることを確保します。
定時株主総会における事業報告書類の役割
定時株主総会では、多くの重要な書類が使用されます。これらの書類は、総会の円滑な運営や株主に対する情報提供、法的な証拠としての役割を果たします。適切な書類管理を行うことで、法的なトラブルを未然に防ぎ、株主総会の透明性と信頼性を高めることができます。ここでは、定時株主総会で必要となる書類の種類とその重要性について解説します。
必要書類の種類
定時株主総会で必要とされる主要な書類には以下のものがあります。
- 計算書類
計算書類とは、各事業年度に係る会社の財産および損益の状況を示すために必要な以下の書類を指します(会社法第435条第2項)。
- 貸借対照表: 会社の資産、負債および純資産を一定の時点(決算日)で表した書類。
- 損益計算書: 一定の期間における会社の純利益や純損失を示す、経営成績ともいえる決算書類。
- そのほかの計算書類: 法務省令で定める、会社の財産および損益の状況を示すために必要かつ適当な書類。
- 事業報告書
事業報告書は、会社の事業活動全般に関する情報を株主に提供する書類です。この書類は定時株主総会で取締役より報告しなければなりません(会社法第438条3項)。 - 附属明細書
附属明細書は、計算書類および事業報告書の内容を補足する書類で、定時株主総会では提出は必須ではありません。これには以下の内容が含まれます。
- 計算書類の附属明細書: 財務情報の詳細な内訳や説明。
- 事業報告の附属明細書: 事業活動に関する詳細な補足情報。
- 監査報告書
監査役設置会社や会計監査人設置会社においては、計算書類や事業報告は監査役や会計監査人の監査を受け、監査報告書が作成されます。会社法では必要ではないものの、会社経営の観点からは、監査報告書の作成や方向を行うことが好ましいといえます。 - 議事録作成
定時株主総会の概要をまとめた議事録を作成しなければなりません。(会社法第318条第1項)
これらの書類は会社法において保管が義務付けられています。
書類の重要性
定時株主総会で使用される書類は、定時株主総会の運営において非常に重要な役割を果たします。その理由について解説します。
透明性の確保: 会社の状況や意思決定の過程を株主に対して明確に示すことで、経営の透明性を確保し、株主の信頼を得ることができます。
法的証拠: 定時株主総会の議事録の作成は会社法でも定められていて、決定事項を明確に残すことで、トラブルを防ぐことができます。
法令遵守: 会社法などの法令に基づく書類の作成・報告・保管は、法令遵守の観点からも重要です。これにより、法的なトラブルを未然に防ぐことができます。
取締役は定時株主総会時に株主に対し、取締役会の承認を受けた計算書類および事業報告(監査役や会計監査人の監査を受ける場合は、監査報告または会計監査報告を含む)を報告しなければなりません。(会社法第437条)
会社法による書類の保管義務
株主総会においては、会社法に基づいた書類の保管義務が厳格に定められています。これらの規定を遵守することで、法的なトラブルを防ぎ、企業の透明性と信頼性を確保することができます。まずは、具体的な法的要件とデジタル保管の利点について解説します。書類のデジタル保管を活用することで、会社法に基づく保管義務を効率的かつ効果的に満たすことができます。
書類の保存期間について、詳しくは以下のコラムでも解説しています。
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法的要件の詳細
会社法では、株主総会に関連する書類の保管について以下の要件が定められています。会社法に基づくこれらの保管義務を遵守することで、法的なトラブルを防ぎ、会社の透明性と信頼性を向上させることができます。
議事録: 会社法第318条第2・3項に基づき、株主総会の議事録は株主総会の開催日から10年間保管することが義務付けられています。この議事録は、総会での討議内容や決議事項を記録したもので、法的な証拠として重要です。
決算書類: 会社法第435条に基づき、貸借対照表、損益計算書などの決算書類も法律により計算書類を作成した時から10年間保管することが求められます。これにより、会社の財務状況や経営成績を明確に記録し、後々の監査や調査に対応するための証拠となります。
事業報告書: 取締役会設置会社においては、取締役会の承認を受けた計算書類および事業報告(監査役や会計監査人の監査を受ける場合は、監査報告または会計監査報告を含む)を提供しなければなりません(会社法第437条)。
株主名簿: 株主の情報を記載した株主名簿は、株主総会の出席者や議決権の確認に使用されるため、会社法で保管期間は定められていませんが適切に保管する必要があります。この名簿は総会の運営においても重要な役割を果たします。

書類のデジタル保管の利点とは
会社法に基づき、株主総会の書類は一定期間保管する義務があります。この要件に対して、書類のデジタル保管には以下のような利点があります。
スペースの節約: 物理的な書類をデジタル化することで、保管スペースを大幅に削減できます。これにより、社内スペースを有効活用できます。
環境負荷の軽減: 紙の使用量を減らすことで、森林資源の保護に貢献します。また、印刷にかかるエネルギーやインクの消費を抑えるため、環境負荷の軽減にも繋がります。
セキュリティの向上: デジタル保管では、アクセス権限の設定や暗号化によって、重要な書類を安全に管理することができます。不正アクセスや紛失のリスクを低減します。
BCP対策の強化: デジタル化したデータはバックアップが容易であり、火災や地震などの災害時にも迅速に復旧できます。データの消失リスクを最低限に抑えることができます。
業務効率の向上
書類のデジタル化による効率性の向上は、株主総会の書類の保管においても重要です。
書類の迅速な検索と共有: デジタル化された書類はキーワード検索が可能で、迅速に情報を見つけることができます。
リアルタイムの更新: デジタル化された書類であれば、議案や資料内容の変更が、リアルタイム更新できるため、関係者へすぐに情報を共有できます。
アーカイブの効率化: 過去の記録や資料もデジタル化することで、迅速に参照することができ、情報管理が容易になります。
コストの削減
デジタル化は、直接的および間接的なコスト削減にも繋がります。
印刷費用の削減: 紙の印刷を減らすことで、用紙代やインク代を大幅に削減できます。
保管スペースの縮小: 物理的な保管スペースが不要となり、社内スペースの有効活用できます。
郵送・配送コストの削減: 書類を郵送するための運送費用や、書類の移動にかかる時間と手間を減らすことができます。
環境負荷の低減
デジタル化は、環境保護にも大きな貢献をします。
紙の消費量削減: 紙の使用量を減らすことで、森林伐採を抑制することができます。
エネルギー消費の削減: 印刷だけではなく、紙の製造に必要なエネルギー消費を削減、低減することができます。
廃棄物の減少: 紙やインクカートリッジの廃棄物を減らすことで、ゴミの処理にかかるコストや環境への負荷を軽減することができます。
書類のデジタル保管のための具体的手順
書類のデジタル化保管を成功させるためには、計画的かつ段階的に取り組むことが重要です。ここでは、デジタル化の準備段階から実施段階、そして保守管理に至るまでの具体的な手順を解説します。これらの手順をしっかりと踏むことで、スムーズなデジタル化を実現し、効率的な書類管理が可能になります。
準備段階
デジタル化を進める前に、しっかりとした準備を行うことが必要です。以下のステップを踏んで、スムーズな移行を計画しましょう。準備段階を踏むことで、株主総会の書類デジタル化がスムーズに進み、効率的かつ効果的な結果を得ることができます。
現状の書類管理を把握する: 現在の書類管理方法を確認し、どの書類をデジタル化すべきかを明確にします。書類の種類や量、対象書類の使用頻度を把握し、優先順位を決めます。
デジタル化の目的と目標を設定する: デジタル化によって達成したい具体的な目標を設定します(例:保管スペースの削減、検索時間を半減するなど)。目標を設定することで、デジタル化の進捗を評価しやすくなります。
方法を選定する: 社内でスキャンした書類をデジタル化する方法や、外部のデジタル化に適したツールやシステムを選定します。外部に依頼することで、社内でスキャンする手間の軽減や、外部のサービスを利用して検索できるようOCR処理やファイル名を付与するなど、効果的に保存、整理、検索するためのサービスを提供しているので便利です。
従業員の役割を決める: デジタル化を担当するチームや従業員を選定します。それぞれの役割を明確にし、責任を持って進められるようにします。必要に応じて教育を行い、スムーズに作業が進むようにします。外部ツールの使用有無も併せて想定しておきます。
導入のスケジュールを作成する: デジタル化導入に必要な工程に対して、具体的なスケジュールを設定します。進捗を定期的に確認し、必要に応じてスケジュールを調整します。
セキュリティ対策を講じる: デジタル化された書類のセキュリティを確保するために、適切な対策を検討します。アクセス制限やデータ暗号化、バックアップ体制などを整え、外部のツールを利用する際はセキュリティ対策が行われているかをあらかじめ確認します。
実施段階
準備が整ったら、いよいよデジタル化の実施に移ります。実施段階を進めることで、株主総会の書類デジタル化がより効率的かつ効果的に行われます。
社内で行う場合、社内のプリンターで手軽に書類のデータ化が可能、情報漏えいのリスクが低い一方で、デメリットもあります。例えば保存データの命名規定や保存場所、アクセス制限などの管理方法が手間となり、高解像度のスキャナーや専用のソフトウェアの導入コストが高く、従業員の教育に時間と労力がかかることもあります。また、書類量によってはスキャン実施に膨大な時間がかかりデジタル化実施中に通常業務が滞る可能性もあり、効率的な進行が難しくなることがあります。これらのデメリットを考慮すると、外部の専門業者に委託することが有効な解決策となります。
以下は、外部に委託する場合の実施段階の手順です。
書類のスキャン: 外部の専門業者に書類のスキャン作業を委託します。専門業者は高性能なスキャニング機器を使用し、高品質なデジタル化を効率的に行います。また、大量の書類を短期間で処理する能力があり、迅速なデジタル化が可能です。
デジタルファイルの保存と整理: スキャンされたデータは、安全なクラウドストレージまたは文書管理システム(DMS)に保存されます。外部業者はファイルを適切に整理し、OCR処理や、カテゴリ別や日付順に管理するほか、ファイル名の付与やタグ付けを行い、後から簡単に検索できるようにします。
セキュリティ設定の実施: 外部業者のツールが高度なセキュリティ対策を講じてデジタルファイルを保護している場合は、アクセス権限の設定やデータ暗号化、定期的なバックアップなどを適切に行い、機密情報の保護を徹底します。そのため、外部業者のツール選定には厳格なセキュリティ基準があり、高いレベルでデータを守ることができるかを確認してください。
進捗状況の確認と評価: 外部業者と定期的にコミュニケーションを取り、デジタル化の進捗状況を確認します。業者からの報告に基づき、計画通りに進んでいるかを評価します。計画通りに進んでいない場合は、業者と協力して原因を特定し、適切な対策を講じます。
フィードバックの収集と改善: デジタル化の過程で得られたフィードバックを外部業者に共有し、プロセスの改善に役立てます。業者はプロフェッショナルな視点から新たな課題や問題点を解決し、より効率的なデジタル化を目指します。また、外部業者のノウハウを活用することで、社内のデジタル化スキルも向上させることができます。
保守管理
デジタル化が完了した後も、書類の保守管理を適切に行うことが重要です。以下のステップに沿って、保守管理を行いましょう。保守管理を行うことで、デジタル化された書類の安全性と効率性を維持し続けることができます。適切な保守管理を実施することにより、株主総会の書類管理が常に最適な状態で運用されるようになります。
定期的なバックアップ: デジタルデータの安全性を確保するために、定期的にバックアップを取ります。バックアップを自動で行う設定をするとデータを保護できます。バックアップデータは、異なる場所に保管することを推奨します。災害やシステム障害時にデータを迅速に復元できるようにします。
ソフトウェアのアップデート: 使用している文書管理システム(DMS)やクラウドストレージのソフトウェアを、セキュリティ改善や新機能を活用するために常に最新の状態に保つ必要があります。アップデートの通知を見逃さないよう、定期的に確認を行います。
セキュリティ対策の強化: デジタル書類のアクセス権限を定期的に見直し、必要に応じて更新します。特に機密性の高い情報については、アクセス権限を厳密に管理します。
不正アクセスやデータ漏洩を防ぐため、セキュリティソフトウェアやファイアウォールを使用し、システムの保護を強化します。
利用者からの意見収集と改善: デジタル書類の使用に関する従業員からの意見や感想を定期的に収集し、実際の運用における問題点や改善点を把握できます。収集した意見を基に、システムや手順の改善を行い、使いやすい環境を提供します。
まとめ:デジタル保管で株主総会の事業報告書類の効率管理
株主総会の書類をデジタル保管することで、業務効率の向上やコスト削減、さらには環境保護まで、多くのメリットを得ることができます。デジタル保管を成功させるためには計画的な準備と実施、そして継続的な保守管理が不可欠です。この取り組みにより、企業全体のパフォーマンス向上と持続可能な成長を実現することができます。
ヤマトシステム開発の「文書スキャニングソリューション」は、高品質なスキャニング技術と信頼性の高いデータ管理システムを提供し、効率的な書類デジタル化をサポートします。特に大量の書類を効率的にデジタル化する必要がある企業にとって、非常に有用です。デジタル保管を導入することで、株主総会の書類管理は効率的で管理しやすくなり、企業の持続可能な成長を支える重要な戦略となります。ぜひこの機会にデジタル保管化を推進し、より効果的な株主総会の書類管理を実現していきましょう。
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