製造業におけるDX推進の動向と部門別の取り組み紹介

製造業においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が加速しています。
しかし、人材や技術者不足、資金調達の課題がその進行を妨げているのも事実です。本記事では、製造業が直面するこれらの課題に対する解決案と、製造業の部門別のDX推進事例について解説します。
製造業がどのようなDX推進を行っているかを知り、貴社のDX推進に活用しましょう。
製造業におけるDX取り組み状況
製造業におけるDX推進は、スマートファクトリー、ロボティクス・自動化、デジタルワークフロー、AI・データ分析、クラウド活用などで活用されています。
大手企業では進んでいるものの、中小企業では人材・技術者不足や資金不足が課題となっています。各業界での取り組み状況は異なり、中小企業においては、コスト負担や専門知識の不足がDX導入の障壁となっています。このような状況を改善するために、政府がIT導入補助金やものづくり補助金などの支援策を提供し、DXの普及を促進しています。これにより、製造業全体の競争力向上が期待されています。
製造業のDX取り組み事例
製造業ではさまざまなDX推進が行われています。
今回は3つの取り組み事例を紹介します。
技能伝承
熟練者と新人の作業の動きをセンサーで計測し、どこが違うのかをデータで「見える化」します。新人は自分の苦手な動きに絞って繰り返し練習できるので、効率よく技術を学ぶことができます。この仕組みによって、作業スキルが標準化され、高品質な製品を安定して作れるようになりました。
生成AIで設計プロセス自動化
自社製品のモーターの中核部品について、生成AIが設計とシミュレーション結果を基に改善を繰り返し、自ら設計を最適化していく開発プロセスを構築しました。人手では数か月掛かっていましたが、AIであれば数日でPDCAを回し、開発期間を大幅短縮しました。熟練技術者のノウハウを結集した設計値をも上回りました。
工場の生産活動情報をクラウドで集約
世界中にある工場の生産量について、それぞれの地域の需要に合わせて生産変動を提供しました。工場の機械に異常が起きた際には、その情報がリアルタイムで現場の担当者に通知されるため、エンジニアは迅速に改善作業に取り掛かることができ、生産全体の効率がさらに上がりました。
上記の取り組み事例のように製造業ではさまざまなDXが生産性向上のために活用され、人材育成にも貢献しています。さまざまな製品生産のプロセス全体をデジタル技術でDX推進しています。
DX推進する上での課題
国内製造業では、新たな設備投資が進まず、従来の設備のまま現場の熟練技能者の知恵やオペレーションの工夫で生産性向上に対応してきました。その結果、最新の生産技術が根付いていません。また、熟練技能者の高齢化と設備の老朽化が相まって、持続可能な生産体制の維持が危ぶまれる状況にあります。現在は熟練技能者により生産される競争力が高い製品が日本の製造業を支えています。ただし国内に限らず、急速に変化するグローバル市場で持続的な成長を実現するためには、製造業のDX推進が不可欠になりますが、課題が多岐にわたります。
まず第一に、人材不足が大きな課題です。特にITリテラシーを持つデジタル技術者が不足しています。
特に先進的なデジタルスキルを持つ人材の確保は容易ではありません。さらに、既存の従業員に対するデジタル技術の教育やスキルアップも重要になりますが、これには時間とリソースがかかります。
次に、資金調達も課題です。システム開発やサービス導入に発生する費用、そのシステム維持にも費用が発生します。
不足しているデジタル技術者の育成
DX推進を成功に導くためには、適切な人材の育成と確保が必要となります。DXを推進するためには、デジタル技術に精通した専門知識を持つ技術者だけでなく、変革をリードできるリーダーシップスキルを備えた人材が求められています。
解決するためには、社内での継続的な教育プログラムの導入や、外部との連携による人材育成が重要です。研修やワークショップ、実地訓練を通じてデジタル技術を高め、業務改善に活かせるよう教育します。若手社員の育成だけでなく、既存の従業員のスキルアップも図り、継続的な教育を行い、DX推進を目指すために社内全体のデジタル技術を向上させることが必要です。
資金調達
DX推進は、企業の競争力を大幅に高める可能性がありますが、実現するためには多くの資金が必要となります。特に先進技術の活用や自社システムのために完全オーダーメイド開発(フルスクラッチ型)を行うには、高額の資金が必要になります。そのため、製造業におけるDX推進の成功には、適切な資金調達戦略を策定することが不可欠です。 中小企業においては、継続的な成長を実現するため、経済的な支援を受ける補助金制度を活用する方法もあります。以下で詳細を紹介します。
補助金以外にも、政策の方向性としてイネーブラーの育成と目的意識を揃えた共通基盤の整備が必要とされています。
これまで | 政策の方向性(案) | |||
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DX投資の促進 | 製造事業者のDX投資の喚起 | 投資の促進製造事業者のDX投資が進まないという課題に対して、税制や補助金等により、需要を喚起 | 引き続き、DX税制やものづくり補助金等を通して、需要サイドを喚起(※DX税制は下記イネーブラーの育成にも寄与) | |
製造業DXの指針・評価指標の作成 | 投資の促進 投資の促進製造業DXの指針や評価指標がなく、投資意欲を十分に喚起できない、または投資分散が起きていることが課題 | 産学官で連携し、戦略的なDX投資のユースケース等を含む製造業DX の指針・評価指標を作成 | ||
イネーブラーの育成 | 製造業系サービス事業者の育成 | 設計・製造技術、ノウハウ等の外販・コンサルを検討する製造事業者も存在するが、資金やデジタル技術等のリソース不足やコア技術との切り分けが課題 |
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製造業DX技術インテグレーターの育成 | 欧米では、規模が大きい生産技術の一括請負事業者(ラインビルダー)の存在により、生産技術の底上げがあるが、日本では成長産業になっていないことが課題 |
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共通基盤の整備 | 企業間のデータ連携の進展 | 欧州は、自動車を中心に、産業大でのSC 最適化の構想が進んでいる。一方で、企業を超えたデータ連携が進展しないことが課題。 |
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標準化の進展 | 欧州は、戦略的なデジュール戦略を展開し、域内企業の事業発展に繋げる。更に、製造ソリューションやデータ連携の手法等についても、標準化を進展。 |
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人材育成 | 製造業現場を熟知するIT人材が不足。企業価値向上を念頭に置いた上で、全体最適を図ることが必要。 |
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【引用元】製造業のDXについて 経済産業省
製造業 部門別DX推進の取り組み紹介
製造業のDXを推進するためには、人材不足のデジタル技術者の育成と資金調達が課題となっており、すぐに取り組みできない場合があります。
サービスを導入すれば、自社のためのシステムを構築するより、時間もコストも削減につながります。デジタル技術についても、サービスのマニュアル通りに実施することや、導入時の説明会に参加することで、解消へつながります。
製造業における部門別の取り組みについて紹介いたします。
情報システム部門における取り組み
- BtoBtoB受発注業務効率化システム
メーカーと販売代理店とエンドユーザ間の受発注を効率化できます。 見積・発注状況、在庫状況のリアルタイム反映や、会員限定の受発注サイトの構築、製品のプロモーション機能として販売・購入の促進までできます。 - 出荷業務効率化システム
注文受注から出荷まで一気通貫で管理でき、製品が顧客の手元に届くまでのプロセスを効率化できます。
取引先から注文を受けシステムへ登録され、製品の在庫状況を確認し確保(引当)できます。出荷指示書を作成し梱包発送までをサポートします。 - 手書き申込書デジタル化
手書きの申込書などの帳票をデータ化します。
店舗や取引先ごとに異なる手書きの申込書をデータ化し、全国の出荷元にて伝票発行を可能にします。専用の管理ページにてステータス管理もできます。
経理部門における取り組み
- 帳票(請求書など)Web配信
請求書データをもとに請求書を作成し、取引先への配信までをWeb上で行えます。
CSVデータなどを取り込むだけで発行が可能で、発行した請求書は、取引先へメールや電子配信や専用のWebページを通じて届けられます。システムで管理できるため履歴管理も簡単になります。 - マイナンバー収集代行
従業員や取引のある個人事業主や支払いを行った個人のマイナンバーを収集し保管・管理します。
厳重な保管が必要なマイナンバー管理は非常に手間がかかります。外部委託することで、情報漏えいリスクを低減や、担当者の煩雑な業務負担を大幅に軽減し、安全かつ確実にマイナンバーを管理できます。支払調書の作成、税務署提出まで支援しているサービスが多くあります。 - 自社券や株主優待券の集計
自社で発行している株主優待券や商品券などの、利用後の回収、集計、発行元への発送や保管・溶解処理ができます。利用された商品券を発送いただき、集計データを作成し、精算処理を代行します。発行元に商品券の精算手続きにおいて、高品質・高効率性が実現できます。 - 企業間データ交換
企業間の取引におけるデータを自動変換し、最適な形で取引先へ提供します。
受注データなどの取引情報を、EDIシステムを介して自動でやり取りできるため、手作業によるデータ入力や変換の必要がなくなり、業務を効率化できます。受注データなどを複数の拠点や企業間でリアルタイムに共有ができます。
総務部門における取り組み
- 社内便追跡・管理
社内便の送り状を発行し、バーコードで管理。送り状ごとに発着・受領までの通過を管理、追跡できます。
配送状況をインターネットより管理できるため「いつ送った?」「今どこ?」の問い合わせ作業を軽減し、受領メールを受け取ることができます。バーコード型の伝票管理のため、簡単に読み取りができます。 - 重要物配送
「いつ」「どこで」「だれが」配送物を開閉したのかを管理し、重要物の配送を支援します。
顧客情報や社内機密情報などの重要物を安全に配送できます。専用のICカードなどを使わないと開錠できない仕組みで、荷物の現在位置や開閉履歴を確認できます。 - 名刺管理
社員が保有する取引先企業の名刺情報を一元管理します。
社員が保有する名刺情報をデジタル化し、社員で共有できます。パソコンやスマートフォンより確認できるため外出先でも簡単に連絡先や住所の確認ができます。訪問履歴管理や、メール配信も行えるため顧客管理まで行えます。 - インターネットFAX
FAXの送受信をパソコンやスマートフォンなどを使用して、インターネット上で行えます。
FAX機や電話回線を必要とせず、インターネット環境があれば、いつでもどこでもFAXの送受信ができます。受信相手が従来のFAX機を使っていても問題なく送信できます。受信したFAXは印刷することなく内容を確認することができます。
そのほかにおける取り組み
- IT資産管理、キッティング
パソコンやタブレット端末の調達からキッティング、返却や廃棄まで一連の対応を行います。
企業が保有するパソコンやタブレット端末などのIT資産を正確に把握し、管理下にないパソコンや無許可のソフトウェアの利用を防ぎます。OSやソフトウェアの更新漏れをなくし、ウイルス感染やサイバー攻撃のリスクを低減します。 - システム運用監視
ネットワークや社内システムの稼働状況を24時間365日有人監視します。
正常に安定して稼働し続けているかを監視し、障害の予兆検知と予防し、障害を検知すれば原因を特定して素早く復旧させ、安定したシステム稼働を実現し、システムを止めないことが目的になっています。 - 代金回収支援
請求書の発行から送付までの一連の業務をWeb上で完結させることができます。
請求データをアップロードし、請求書の作成、発送までを自動化でき、手作業で行っていた印刷、封入、郵送といった作業が不要になり、郵送費や紙代のコストや、作業時間が短縮し人件費の削減につながります。
製造業のDX推進を成功させるためのステップ
製造業におけるDX推進を成功させるためには、計画的で段階的なアプローチが求められます。まず、現状の業務を詳細に分析します。
現在の業務毎の課題や非効率な点を具体的に洗い出します。課題解決のために満たすべき機能や性能を定義し、サービス導入やシステム構築を検討し、費用対効果などを確認し選定を行います。
DX推進に関する取り組み開始時だけではなく開始後にも、定期的な人材育成が重要になります。育成だけではなく、成果を可視化して成功事例を共有することで、さらなるモチベーションを引き出すことができます。
当社は、業種業界に関わらず数多くのお客さまのDX推進に関する課題を解決してきました。 漠然とした課題でも構いません。現在課題を感じているなら、課題解決へのサインです。課題を整理し、課題解決までの最短ルートを一緒に見つけ出します。お客さまの状況に合わせた最適な解決策をご提案しますので、まずはお気軽にご相談ください。