犯収法改正に伴う健康保険証による本人確認廃止とは?公的個人認証による本人確認方法

2024年12月2日で健康保険証の新規発行が停止され、それに伴い犯収法上の「本人確認書類」から「健康保険証等」が削除されました。これにより、クレジットカード新規発行時や銀行口座開設時などの本人確認書類として健康保険証が将来的に利用できなくなりました。
最近ではマイナンバーカードを使用した公的個人認証 (JPKI) での本人確認が増加傾向です。公的個人認証 (JPKI) は、マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用して、なりすましや改ざんの防止を担保し、インターネット上での本人確認などを可能とする、デジタル庁の公的なサービスです。マイナンバーカードを利用してオンライン上で本人確認ができるため、迅速かつ簡単に手続きができます。
本記事では、改正される法律や公的個人認証 (JPKI)についてご紹介します。
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本人確認方法
クレジットカード新規発行時や銀行口座開設時など、さまざまな場面で本人確認は必要となります。これらの場面で本人確認が必要な理由の1つに「犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、犯収法)」があります。この法律では、申込者が本人であることを特定するために、本人確認書類の提示や送付(アップロード)が必要であると定めており、事業者はその記録を一定期間保存することが義務付けられています。
クレジットカード新規発行時
クレジットカードの新規発行時の本人確認方法は、クレジットカード発行会社によって異なりますが、以下のような方法と種類があります。
本人確認方法
- オンライン: 時間や場所を限定せず、パソコンやスマートフォンなどのスマートデバイスより、本人確認書類のアップロードや、本人容貌の撮影などを実施する方法
- 対面: 店頭や窓口で申込者本人が直接申込手続きを行う際、本人確認を実施する方法
- 郵送: 本人確認書類を郵送で提出し、転送不要郵便を申込者へ送付することにより、住居の確認に代える方法
本人確認書類の種類
- 運転免許書または運転経歴証明書
- 健康保険証
- パスポート
- 在留カードまたは特別永住者証明書
- マイナンバーカード
- 住民基本台帳カード(写真付き)
- 住民票の写し(原本)
- 障害者手帳
- 公共料金の領収証書
- 社会保険料の領収書
- 国税・地方税の領収証書または納税証明書 など
提出された本人確認書類は、クレジットカード発行会社の審査部門によって厳重にチェックされます。個人信用情報機関を通じて申込者の信用状況を確認し、クレジットカードの支払状況や残高の情報、現在の借入状況などの情報を把握し、クレジットカードを発行するかの判断材料として使用されています。
これらの本人確認手続きが全て完了し、問題がなければ、クレジットカードが発行されます。本人確認は安全で信頼性の高いクレジットカード利用を実現するための重要なステップです。
本人確認の具体的な方法について、以下の記事よりご確認いただけます。
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銀行口座開設時
銀行口座の新規開設時の本人確認方法は、金融機関によって異なりますが、以下のような方法と種類があります。
本人確認方法
クレジットカード新規発行時同様になりますが、金融機関によってはアプリで新規開設する方法もあります。
- オンライン: 時間や場所を限定せず、パソコンやスマートフォンなどのスマートデバイスより、本人確認書類のアップロードや、本人容貌の撮影などを実施する方法
- 対面: 店頭や窓口で申込者本人が直接申込手続きを行う際、本人確認を実施する方法
- 郵送: 本人確認書類を郵送で提出し、転送不要郵便を申込者へ送付することにより、住居の確認に代える方法
- アプリ: スマートフォンにアプリをインストールし、本人確認書類のアップロードや本人容貌の撮影を行う方法、最短当日の口座開設が可能
本人確認書類の種類
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 住民基本台帳カード(写真付き)
- 在留カード
- 特別永住者証明書
- 運転経歴証明書
- 各種福祉手帳
- 官公庁から発行・発給された書類で官公庁が顔写真を貼付したもの
- 健康保険証
- 各種年金手帳
- 後期高齢者医療被保険者証
- 共済組合の組合員証・加入者証
- 母子健康手帳
- 児童扶養手当証書 など
本人確認は、他人が名義を盗んで銀行口座開設することを防ぐために行われ、個人情報や財産を守るために、正確な本人確認が必要となります。不正なアクセスや取引を防ぐために、確実に本人であることを証明する手続きが求められています。
金融機関は信頼できる金融サービスを提供するため、確実な本人確認を行うことが重要となり、安全な金融システムを保つために欠かせないものです。
マイナンバー制度に関連して施行された「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(以下、口座管理法)」と「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律(以下、口座登録法)」の2つの法律があります。
口座管理法とは、2024年4月に施行され金融機関へマイナンバーを届け出る法律です。マイナンバーを預貯金口座と紐付けるか、預貯金者の希望の有無を確認するよう義務付けるものです。紐付けるかは預貯金者の任意になります。マイナンバーと紐付けを希望する場合、金融機関の窓口のほかに、マイナポータルからも申請できます。
口座登録法とは、2024年4月に施行され預金口座を国に登録してマイナンバーと紐づけすることにより、年金、児童手当や所得税の還付金などの、幅広い給付金についてスムーズな申請・給付を受けられます。
犯収法施行規則の改正に伴う本人確認方法
2024年12月2日で健康保険証の新規発行が停止され、それに伴い犯収法施行規則の「本人確認書類」から「健康保険証等」が削除されました。犯収法施行規則第7条第1号ハを改正し、「健康保険証等」が削除されましたが、既に発行されている「健康保険証等」については、一定期間は引き続き本人確認書類として用いることができるよう最大1年間の経過措置があります。
健康保険証とマイナンバーカードの一体化
健康保険証とマイナンバーカードが一体化したマイナ保険証による医療機関の受診などが推奨されています。
本人確認方法については、マイナンバーカードで引き続き行うことができ、安全かつ効率的な本人確認ができます。今後は、マイナンバーカードを活用した本人確認方法が主流になると予想されています。将来的に健康保険証では本人確認ができなくなります。
マイナンバーカードを所持していない場合
マイナンバーカードを所持していない場合は、そのほかの本人確認書類で行う方法もありますが、健康保険証の代わりとして、しばらくは「資格確認書」を本人確認書類として利用できる経過措置を設けると警察庁から発表がありました。
犯収法とは
犯収法とは、正式名称は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」で、「犯罪収益移転防止法」とも呼ばれています。
犯罪によって得られた収益の移転を防止するための法律です。この法律は、事業者が犯罪収益の移転に関与することを防止するために、本人確認や取引記録の保存などを義務付けています。
犯収法の詳細について、以下の記事で紹介しています。
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犯収法施行規則の改正
前項で解説した通り、2024年12月2日に犯収法施行規則の「本人確認書類」から「健康保険証等」が削除されました。犯収法施行規則第7条第1号ハを改正し、「健康保険証等」が削除されましたが、既に発行されている健康保険証等については、一定期間は引き続き本人確認書類として用いることができるよう最大1年間の経過措置があります。
犯収法では、お申し込み本人の写真付きの本人確認方法の考え方として、以下2種類があります。
- 「写真付きの本人確認書類」の提示で本人確認できる(犯収法施行規則第6条第1項第1号イ)
- 「写真付きの本人確認書類」の提示のほかに、本人確認書類に記載している住居へ「転送不要郵便物等」が届くことを確認する(犯収法施行規則第6条第1項第1号ロ)
などの方法があり、今回の改正では取引時の本人確認手続きを強化する規定が盛り込まれています。
本人確認書類に位置付けるため、犯収法施行規則(第7条)を改正
「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令の一部を改正する政令」 第3章第13条の改正に伴い、犯収法施行規則第7条第1号ハの改正「顔写真のない本人確認書類」に位置付け
- 当該交付申請者が申請時に主務省令で定める年齢に満たない者(特定年齢未満申請者、1歳を想定)の場合、交付する個人番号カード(マイナンバーカード)へ顔写真の添付は必要としない。
本人確認書類について定める犯収法施行規則第7条第1号ハから健康保険証等を削除
「健康保険法」第3章第3節第51条の3を改正に伴い、犯収法施行規則第7条第1号ハの改正「健康保険証等」を削除
- 健康保険証の新規発行停止に伴い、保険医療機関や薬局による被保険者等の資格確認は個人番号カード(マイナンバーカード)による電子資格確認が原則となります。
本人確認書類に係る規定に当該書面を追加
「健康保険法」第3章第3節第51条の3を改正
- 被保険者またはその被扶養者が電子資格確認を受けることができない状況にあるときは、当該被保険者は資格に関係する情報として厚生労働省令で定める事項を記載した資格確認書の交付、または当該事項の電磁的方法による提供を求めることができます。ただし資格確認書は、当分の間の経過措置となります。
顔写真のない本人確認書類に位置付けるため、犯収法施行規則(第7条)等を改正
犯収法施行規則第7条第1号ハの改正「顔写真のない本人確認書類の整理」により本人確認書類の整理
- 在留カード、特別永住者証明書: 交付時16歳未満は顔写真がない
- 精神障害者保健福祉手帳: 希望しない場合は顔写真がない
- 外国人登録証明書: 一部の書類には顔写真がない
マイナンバーカードによる本人確認方法
マイナンバーカードを利用した本人確認方法にはいくつか方法があり、対面およびオンラインでの本人確認が可能です。
- 対面での本人確認方法: 事業者や自治体が保有するスマートフォンなどに「マイナンバーカード対面確認アプリ」をダウンロードし確認する方法があります。
提示されたマイナンバーカードの券面にある照合番号B(生年月日、有効期限、セキュリティコードの情報を組み合わせた番号)とICチップを読み取ることで、カードの券面が真正であるかを判別し、対面での本人確認ができます。 - オンラインでの本人確認方法: 犯収法施行規則施行規則6条1項1号「ホ」「ヘ」「ト」「ワ」の4種類があります。
「ホ」写真付き本人確認書類画像と、本人の容貌画像の送信を受ける方法
「ヘ」写真付き本人確認書類のICチップ情報と、本人の容貌画像の送信を受ける方法
「ト」本人確認書類の画像またはICチップ情報の送信を受け、併せて金融機関もしくはクレジットカード発行会社に本人特定事項を確認済であることを確認する方法
「ワ」マイナンバーカードのICチップをスマートフォンで読み取り、公的個人認証(JPKI )を用いることで本人確認する方法

公的個人認証(JPKI )とは
まずは、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類を使用した本人確認方法に、eKYCがあります。eKYCとは、電子的(electronic)に申込者の本人確認(Know Your Customer)を行う仕組みで、オンライン上のみで本人確認を完結できます。お申し込み内容と本人確認書類や容貌画像の照合が必要になり、そのチェック方法は目視やAIを使って行われています。
さらに、マイナンバーカードのみ有効な本人確認方法に、犯収法施行規則6条1項1号「ワ」の公的個人認証(JPKI)があります。マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用して、なりすましや改ざんの防止を担保し、インターネット上での本人確認や電子申請などを可能とする、デジタル庁の公的なサービスです。
オンライン上で本人確認が完結でき、迅速かつ簡単に手続きを完結できます。
公的個人認証(JPKI)の 導入メリット
公的個人認証(JPKI )を利用するメリットは、以下のような点が挙げられます。
- フルデジタル化が可能なため、人件費などが削減できる
- 即時の審査が可能で、本人確認完了までのスピードが速い
- 偽造による被害の可能性が低い
- ユーザのオペレーションがわかりやすい
- 容貌画像(顔写真の撮影)が不要となる
このように、公的個人認証(JPKI )は、本人確認の方法として非常に便利で安全な方法です。
本人確認に公的個人認証(JPKI )を利用することで、申込者へより便利で安全なサービスを提供することにつながります。
公的個人認証(JPKI )の導入方法
公的個人認証(JPKI )を導入する方法は大きくわけて2つあります。
1つ目は、プラットフォーム事業者になる方法です。
事業者が直接、電子証明書の有効性を確認する役割を担い、他の民間事業者にもその機能(電子証明書の有効性確認)を提供することができます。ただし手続きに時間がかかり、システム環境を整備する必要があります。手続き方法は以下になります。
- J-LIS※と守秘義務に関する誓約を取り交わしたうえで公的個人認証サービスに係る技術仕様などの開示を申請し入手
- 入手した技術仕様を踏まえ、認定基準に示された要求事項を満たすこと証明する書類を作成して、デジタル庁および総務大臣への認定審査を申請
- 認定後に公的個人認証サービスの試験環境で動作確認を行い、問題がなければ公的個人認証法の規定に基づいたJ-LISからの電子証明書の有効性確認結果の提供を受けるための届出などを行い、本番環境で動作確認しサービス利用開始
2つ目は、サービスプロバイダ事業者になる方法です。
電子証明書の有効性確認を1つ目の解説したプラットフォーム事業者に委託します。この方法では、設備投資や運用コストを節約ができ、サービス導入の期間を大きく短縮できます。
※J-LISとは、地方公共団体情報システム機構(Japan Agency for Local Authority Information Systems)の略称で、マイナンバーカード関連システム、住民基本台帳ネットワークシステム、公的個人認証サービス、総合行政ネットワーク(LGWAN)など各種システムの開発・運営を担っております。
まとめ:犯収法に対応したJPKIなら証明書類Web取得サービス
公的個人認証サービスの導入は、デジタル化が進む社会におけるオンライン取引の安全性を確保する上で重要な要素です。ヤマトシステム開発の「証明書類Web取得サービス」を導入することで、サービス開始までの期間を大幅に短縮することができます。また、申込者本人の身元を厳格に確認し、セキュリティおよびプライバシーを強化できます。
関連サービス

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