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犯罪収益移転防止法で企業が気をつけるべき点とは?本人確認の概要も解説

犯罪収益移転防止法で企業が気をつけるべき点とは?本人確認の概要も解説

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犯罪収益移転防止法で企業が気をつけるべき点とは?本人確認の概要も解説

資金洗浄とも呼ばれる「マネー・ローンダリング(以下)」や、犯罪組織に対する「テロ資金供与」の根絶を狙って制定された「犯罪収益移転防止法」は、時代や世情に合わせて幾度も改正を繰り返されています。また、犯罪に巻き込まれることを防ぐために、企業としての望ましい対応や、万が一疑わしい取引に直面した場合の対応など、気を付けるべき点を見ていきましょう。 

 

犯罪収益移転防止法とは

犯罪収益移転防止法の正式な名称は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」であり、「犯収法」とも呼ばれる法律です。マネロンおよびテロ資金供与の対策(AML / CFT)を実施するための規制であり、国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展への寄与を目指して制定されました。また、資金面から犯罪組織や犯罪行為を根絶することも狙いとしています。

犯罪収益移転防止法は、2008年3月1日より全面施行されました。なお、マネロンの手口は刻々と複雑化・巧妙化が進むため、時代や世情に沿って、何度も改正されています。最近では、2022年12月2日に参議院本会議にて、新たな改正法案が賛成多数により可決・成立しました。

日本で犯罪収益移転防止法施行の中心的な役割を担うのは、日本の資金情報機関である「JAFIC(犯罪収益移転防止対策室)」です。疑わしい取引の届出情報の集約・整理・分析のほか、捜査機関や外国資金情報機関への情報提供などを行っています。

警察庁 刑事局 組織犯罪対策部 組織犯罪対策第一課 犯罪収益移転防止対策室
「犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)とは」
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/jafic/about.htm

この法律の規制は、主に金融機関をはじめとする「特定事業者」を対象としています。この特定事業者には、「特定取引」などを進める際の「取引時確認」の実施や、疑わしい取引に気付いた際の届け出などが義務付けられています。

犯罪収益移転防止法に関わる特定事業者

前述した通り、犯罪収益移転防止法の規制は「特定事業者」を対象としています。特定事業者には、お客様と一定の取引を進める際、取引時確認を求められるなど、一定の法令上の義務が課されています。

下記14の事業者が特定事業者に当てはまります。

・金融機関等
・ファイナンスリース事業者
・クレジットカード事業者
・カジノ事業者
・宅地建物取引業者
・宝石・貴金属等取扱事業者
・郵便物受取サービス業者(私設私書箱)
・電話受付代行業者(電話秘書)
・電話転送サービス事業者
・司法書士または司法書士法人
・行政書士または行政書士法人
・公認会計士または監査法人
・税理士または税理士法人
・ 弁護士または弁護士法人

特定事業者に課せられる義務

特定事業者が進める業務・取引のすべてが、犯罪収益移転防止法の対象になるわけではありません。特定事業者には下記の7つの義務が課されており、それぞれの事業種により、対象となる業務・取引の範囲が定められています。

・取引時確認
・確認記録の作成/保存(7年間保存)
・取引記録等の作成/保存(7年間保存)
・疑わしい取引の届出(※司法書士等の士業者を除く)
・コルレス契約締結時の厳格なチェック
・外国為替取引に係る通知
・取引時確認等を的確に行うための措置

下図で示されている通り、特定事業者の対象義務は一定の業務に定められ、その中に特定取引等が含まれています。特定取引等は、「特定取引」と「ハイリスク取引」に分類されており、いずれも確認事項およびそのチェック方法が異なります。

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特定取引

特定取引とは、下記2つの類型の取引を指します。

①対象取引
犯罪収益移転防止法施行令第7条に記載されている取引です。預貯金口座の開設や大口現金取引、クレジットカードの契約など、特定事業者ごとに、取引時確認が必要な取引が決められています。

②特別の注意を要する取引
上記①以外の取引の中で顧客管理上、特別の注意を要し、マネロンの疑いがあると認められる取引、および同種の取引の状態と明らかに異なる形で進める取引です。

ハイリスク取引

ハイリスク取引とは、マネロンに使われるおそれが、特に高いと見受けられる取引です。通常の特定取引と同様の確認事項に加え、より厳格な方法を用いてチェックします。 下記のいずれかに当てはまる取引が含まれます。

・なりすましの疑いがある取引
・本人特定事項を偽っていた疑いがあるお客様との取引
・特定国等に居住・所在しているお客様との取引(2023年2月1日時点ではイランおよび北朝鮮)
・外国PEPs(重要な公的地位にある者との取引)

また、下図で示す通り、取引によっては特定取引かつハイリスク取引に当てはまるものや、ハイリスク取引ではあるが特定取引には当てはまらないものもあります。

特定取引とハイリスク取引の関係図


特定事業者に必要な取引時確認

特定事業者は特定取引等を進める際、「取引時確認」が義務付けられています。通常の特定取引とハイリスク取引は、いずれも必要な確認事項や方法が異なります。 通常の特定取引に関しては、下記の事項をチェックします。

・本人特定事項
・取引を行う目的
・職業(自然人)または事業の内容(法人・人格のない社団または財団)
・実質的支配者(法人)

一方、ハイリスク取引に関しては、上記と同様の確認事項に加え、多くの事項が追加されます。例えば、その取引が200万円を超える財産の移転を伴う場合には、「資産および収入の状況」のチェックが必要です。 また、「本人特定事項」および「実質的支配者」について、より厳格な方法でのチェックが欠かせません。

個人・法人による取引時確認の違い

個人との取引と、企業などの法人との取引とでは、取引時確認が異なります。特に「職業」「事業の内容」が指す内容が大きく異なり、個人は“日常従事する仕事”、法人・団体は営利・非営利を問わず、“狙いを達成するための行為全般”を指します。

個人の取引の場合、口頭での確認やチェックリストの照らし合わせなどの方法で取引時確認を行います。 法人との取引の場合、登記事項証明書、定款等の書類、またはその写しを確認します。お客様から提示、または送付を受ける以外にも、特定事業者側による書類を確認することも考えられます。

外国法人が取引を進める場合、 上記の方法にプラスして、「日本国が承認した外国政府が発行している書類等で、法人の事業の内容の記載があるもの」、またはその写しを確認しなければなりません。 さらに、法人については実質的支配者の確認を行います。法人の事業経営を実質的に支配する者、議決権などにより法人を支配する者まで遡ることが重要です。

犯罪収益移転防止法における本人確認とは

本人特定事項で本人確認を進める際、個人の場合は氏名、住居および生年月日を運転免許証等の公的証明書等で確認します。 法人の場合は、名称および本店、または主な事務所の所在地について、登記事項証明書や納税証明書などの公的証明書等から確認します。

法人の「本人確認書類」には、登記事項証明書や印鑑登録証明書、官公庁が発行した書類で法人の名称および主な事務所の所在地が記載されたものが該当します。 お客様が法人の場合や代理人による契約の場合、法人や契約者の本人特定事項に加え、法人の取引担当者や契約者の代理人の本人特定事項の確認も必要です。まず、「取引担当者は委任状を有していること」と、「電話により担当者が特定取引等の任にあたっていると認められること」が前提です。

仮に社員証を持っていたり、役員として登記されたりしていても、本人として認められないので注意しましょう。 確実な本人特定事項の確認は、仮名取引やなりすましによる取引などの防止に役立てられます。

犯罪収益移転防止法で企業が気を付けるべき点

現代では、犯罪者によって次々と巧妙かつ複雑なマネロン手法が生み出されており、いつの間にか自社が巻き込まれてしまうことも考えられます。そのため、マネロンのおそれがある「疑わしい取引」について、事例を常に把握しておくことは重要です。事例と同様のことが、自社に起こりうるかどうかを念頭に分析し、事前対策を講じる必要があります。

警察庁 刑事局 組織犯罪対策部 組織犯罪対策第一課 犯罪収益移転防止対策室
「疑わしい取引の参考事例」
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/todoke/gyosei.htm

警察庁 刑事局 組織犯罪対策部 組織犯罪対策第一課 犯罪収益移転防止対策室
「疑わしい取引の届出と届出先行政庁」
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/todoke/todotop.htm

特定事業者は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」によって、取引時確認や疑わしい取引の届出等の義務を課せられています。疑わしい取引の届出は、特定事業者から犯罪収益の取引に関する情報を集め、捜査・検挙へつなげることが狙いです。加えて、事業者のもつサービスが犯罪に巻き込まれることを防ぎ、事業者に対する社会的信頼を高めることにもつながります。

犯罪収益移転防止法が作られた背景

自国だけシビアに対処しても、マネロンは防げません。なぜなら、犯罪者は規制の緩い国に拠点を移して、活動を行うこともあるからです。それを防ぐためには、国際的に協調した対応が欠かせません。 ひとつの国では対応しきれないマネロン対策については、国際組織として39の国と地域が加盟する金融活動作業部会「FATF(ファトフ)」が、190以上の国・地域にマネロン対策を勧告し、主導しています。

FATFは1990年に国際基準として「40の勧告」を策定し、お客様の本人確認および疑わしい取引の届け出などを義務付けることを提言しています。 日本もこの基準に則り、法律を定めて規制を行ってきましたが、近年のマネロンの手口が巧妙かつ複雑化してきていることから、より守備範囲を広げて、強固にした「犯罪収益移転防止法」を新たに制定・全面施行しました。 昨今、海外では実例をもとにした、リスク分析やそのシステムの導入により、モニタリング・フィルタリングを強化する企業が増え、不正取引を効率よく監視する体制が整ってきています。

犯罪収益移転防止法の改正とeKYC

2018年の法改正により、犯罪収益移転防止法では、オンラインで完結可能な本人確認方法が認められました。このオンライン上で本人確認を完結する手続きを「eKYC」と呼びます。

本人確認手続きにはコストと時間がかかり、事業者の負担も大きなものでした。本人確認がオンライン化することで、今まで郵便や印刷にかかっているコストを削減でき、スピーディーな対応が可能です。さらには、申込時の見込み顧客離脱を減らし、新たな顧客獲得にもつながります。

一方、お客様にとっても用意する書類が少ない上、場所も時間も気にせず手持ちのデバイスで申し込める、サービス開始までの待ち時間が短縮するなど、利便性が大きく向上しています。

コラム|eKYCとは? オンライン本人確認の仕組みや導入メリット
https://www.smartwork.nekonet.co.jp/media/column/shoumei01

まとめ:本人確認サービスを導入して業務効率化を図ろう

犯罪収益移転防止法は、犯罪で得た収益を使って、マネロンやテロ行為への資金供与を防止する目的で制定されたものです。年々、悪質化していくマネロンやなりすましの手口に対して、厳しく規制を設けています。特定事業者に義務付けられた取引を進める際の法規制を正しく履行すれば、マネロンの防止とリスク管理を行えます。

また、犯罪収益移転防止法で認められたeKYCの利用により、マネロンやなりすましに巻き込まれるリスクを減らし、業務負担の軽減が可能になりました。 ヤマトシステム開発が提供する「証明書類Web取得サービス」でも、eKYCに対応した本人書類を安全に回収できます。気になる方はぜひお問い合わせください。

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