古物商の本人確認業務は注意が必要!非対面で行う方法をご紹介
ユーズド品やリサイクル品など中古品(古物)を販売する「古物商」にとって、お客さまの本人確認作業はとても重要です。この作業を怠ると、営業停止だけでなく刑事罰の対象にもなるため、古物商は本人確認の作業内容と、そこに関連する法律について知っておく必要があります。
本記事では、古物商における本人確認業務の重要性と、古物営業法や犯罪収益移転防止法との関係などについて説明します。
古物商が本人確認業務で知っておきたい古物営業法とは?
古物営業法とは、古物を売買する際に守らなければならない決まりをまとめた法律で、下記のように定義されています。
第一章 総則 (目的) 第一条
この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
引用元:古物営業法 | e-Gov法令検索
古物の取引を行っていると、取り扱う商品の中に盗品などの犯罪被害品が紛れている可能性があります。このような犯罪被害品を売買してしまうと、場合によっては持ち主へ無償で商品を返還したり、金銭で弁償しなければなりません。そのような事態を未然に防ぐためにも、古物商は下記の「防犯三大義務」を守る必要があります。
1.取引相手へ本人確認を行う義務(古物営業法第15条第1項)
2.発見した犯罪被害品を、警察官へ申告する義務(古物営業法第15条第3項)
3.帳簿へ記録および保存する義務(古物営業法第16条)
特に本人確認については、取引によっては古物営業法だけではなく、犯罪収益移転防止法による確認義務も発生します。これに違反すると後述にある罰則を科せられる可能性があるので、古物営業を行う際には、この二つの法律をしっかりと理解しておきましょう。
古物商が本人確認義務に違反した場合の罰
古物商で基本的に必要となる本人確認ですが、確認業務を怠ってしまうと、持ち主への返還や弁償以外にも、以下のような刑事罰や行政処分を受けるおそれがあります。
■刑事罰
・ 最大6ヶ月の懲役
・ 最大30万円の罰金 のいずれか(もしくは両方)
■行政処分
・ 最大6ヶ月の営業停止
・ 古物商営業許可の取消し
古物営業法による本人確認義務
古物営業法では、本人確認について下記のように定めています。
(確認等及び申告) 第十五条
古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、次の各号のいずれかに掲げる措置をとらなければならない。
古物営業法 | e-Gov法令検索
先述のとおり、古物営業法は「盗品などの売買防止」および「被害の迅速な回復」が目的なので、古物が不正品であるかどうかに注意を払っています。そのため、「売却または交換の委託を受ける」場合には本人確認が必須ですが、古物商が古物を「直接売却する」際には、本人確認は不要です。
また、1万円未満で買い受ける場合も、本人確認の義務が免除されます。
1万円未満でも本人確認義務が発生する商品
古物の買い取り総額が1万円未満の場合は原則不要となる本人確認ですが、換金目的で万引きや盗難されることが多く、より厳しい取引管理が求められる下記の古物は、買い取り金額によらず本人確認が必要となります。
・ 書籍
・ CD/DVD/BDなどのメディアディスク
・ ゲームソフト
・ オートバイおよびその部品
また、古物営業法では買い取りの対象年齢については述べていませんが、東京都では青少年保護育成条例の観点から、1万円未満であっても18歳未満の者からの買い取りでないことを確認する必要があります。警視庁のホームページでは、各都道府県の青少年条例を確認できるので併せて確認しましょう。
警視庁ホームページ
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/jourei-h21/pdf_index.html
犯罪収益移転防止法による本人確認義務
「犯罪収益移転防止法」(犯収法)では、「貴金属など」を取り扱う古物商や質屋を対象に、200万円を超える現金で取引する場合に、本人確認の義務が発生します。
ここで示される貴金属などには、下記が挙げられます。
1.金、白金、銀などの他、政令で貴金属と定められている金属および、これらの合金
2.ダイヤモンド、ルビー、サファイアなどの宝石(貴石、半貴石)および真珠
3.1および2で作られた製品
犯罪では万引きなどで盗んだ貴金属を売って現金化しているケースが多く、ほとんどの場合で偽名による取引が行われています。 そのため、古物商による本人確認がとても重要になってくるのです。
古物商が対面で本人確認を行う際の主な方法
古物商が対面で実施する本人確認は、古物営業法と犯罪収益移転防止法で規定が異なります。そのため、両方の法律の要件を満たす方法で本人確認を行うことが重要です。
古物営業法・犯罪収益移転防止法で定められている、主な本人確認の方法は下記のとおりです。
【古物営業法】
・運転免許証や健康保険証、マイナンバーカードなどの身分証明書を提示してもらう(写真つきでなくても可)
・勤務先や家族など、本人の身元を確かめられる第三者に問い合わせをする
・本人が直接「住所」「氏名」「職業」「年齢」を記載した書面を受け取る(タブレット端末などに基本事項を入力し、タッチペンやスタイラスペンなどで氏名のみを署名する形式でも可。電子署名なしは不可)
【犯罪収益移転防止法】
<個人>
・運転免許証、マイナンバーカードといった、写真つきの身分証明書を提示してもらう
・本人確認書類(健康保険証や住民票の写しなど)を1点提示してもらい、後日書類に記載されている住所に取引に関係する文書を転送不要郵便で送付する
・本人確認書類を2点提示してもらう
<法人>
・法人の本人確認書類(登記事項証明書、印鑑登録証明書など)を提示してもらう
・本人特定事項(法人名称、本店あるいは主な事務所の所在地)の申告を受け取り、国税庁や法人番号公表サイトで公表されている情報との整合性を確認する
古物商が非対面で本人確認を行う際の主な方法
古物商が非対面で実施する本人確認には、大きく「郵送」と「オンライン」による方法があります。
郵送で行う方法
郵送による本人確認は、犯罪収益移転防止法の改定によってさらに厳しくなり、現在は下記4つの方法が認められています。
1.本人確認書類の原本1点の送付を受ける
2.「本人確認書類のコピー2点」または「本人確認書類のコピー1点と補完書類(※)1点」の送付を受けた後、転送不要郵便を送付する
3.本人確認書類のコピー1点の送付を受けた後、転送不要郵便を送付する(給与振込口座などの開設時、または有価証券取引などでマイナンバーを提示している場合に限る)
4.本人限定郵便の送付し、受け取りの際に写真つきの本人確認書類を提示してもらう
※補完書類には、国税または地方税の領収証書や納税証明書、社会保険料の領収証書や公共料金の領収証書などがあります。また、どの補完書類も領収日付の押印や発行年月日の記載があり、発行から6か月以内であることが条件となります。
オンラインで行う方法
オンラインで本人確認を行う際には、原則として「本人確認時に、その場で撮影した画像(静止画もしくは動画)」を送信してもらうことが必須となります。具体的には、下記3パターンが挙げられます。
1.「本人の容貌を撮影した画像」と、「写真つきの本人確認書類の画像」を送信してもらう
2.「本人の容貌を撮影した画像」と、「写真つきの身分証明書などのICチップ情報」を送信してもらう
3.「写真つきの本人確認書類の画像」もしくは「写真つきの身分証明書などのICチップ情報」を送信してもらい、なおかつ銀行やクレジットカード会社に登録されている本人情報と照合するか、本人の銀行口座へ振込を行う
本人確認書類の画像を受け取る場合は、表面と裏面に加え、厚みなどの特徴も確認する必要があります。ただし、マイナンバーカードの場合は裏面に個人番号が記載されているため、裏面だけは送信を受けないように注意しましょう。
またICチップ情報の場合、ICチップ情報の写真と容貌の画像から本人確認を行うため、ICチップ情報に本人の写真が含まれていることが必須となります。
その他の方法
その他の方法として、古物商のホームページなどから買い取り申請書などに必要事項を記入してもらい(電磁的記録)、電子証明書や電子署名を使って本人確認を行うことも可能です。
1.「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が発行した電子証明書(マイナンバーカードに記載されたもので個人番号の記載のないもの)」と、「電子署名を行った本人の住所、氏名、職業および年齢についての電磁的記録」の提供を受け取る
2.「公的個人認定法に規定する署名検証者が発行した電子証明書」と、「電子署名を行った本人の住所、氏名、職業および年齢についての電磁的記録」の提供を受け取る
3.電子署名を行ったメールの送信を受け取る
1の方法は、総務大臣が認定している、署名検証業務を引き受ける許可を得た民間事業者でしか行えないので注意が必要です。
まとめ:古物商にとって重要な本人確認業務は専門サービスを活用しよう
古物の取引では、古物営業法や犯罪収益移転防止法によって本人確認が義務づけられています。本人確認作業を怠ると、営業停止だけでなく刑事罰の対象にもなるおそれがあるため、古物商には確実に本人確認を行える体制が必要です。
本人確認には多くの方法があり、確認する書類も多岐に亘ります。本人確認にかける人材や時間、リスクやセキュリティ面に不安がある場合は、本人確認業務をサポートする専門サービスを活用してみるのもひとつの手段です。
ヤマトシステム開発の「証明書類Web取得サービス」ではWeb上で本人確認書類をアップロードして確認することができるので、本人確認業務を効率化できます。